第4章 4
試着室から出てくると カノンちゃんはフィッティング出入口で紙袋を持って待っていた。
「なんか買ったの?」
『はい』
「言ってくれれば一緒に買ったのに」
『え!いいです!これは気に入ったので自分で買いたかったんです。』
「そう。まぁ、俺も決まったし会計してほか行こう」
買ったものを会計して何点か寮に送る手続きを済ますと店の出入口で待っていたカノンちゃんの手を取り「行こう」と声を掛けた。
手を振り払われるかと思ったので少しギュッと力を込めたら逃げられないと悟ったのかそこには触れず『どこに行くんですか?』って聞いてきた。
「どこか行きたいところある?」
『本屋と雑貨屋ですかね、』
「いいよ、じゃあ見て回ろ」
それからは2人で気になったお店を「入ってみよう」と言って、入って中を見たり買い物をしたり。
俺が雑貨屋で見つけたおもしろグッズを付けてもカノンちゃんはビックリはするけど笑わず『早く直してきてください』って言うばかり。
本屋に入った時はもう決めてたのか目当ての本を見つけるとすぐにお会計を済ませてるし、雑貨屋ではそれこそノートとペンだけ買って、本当に必需品だけって感じ。
んー、淡白。
トイレから出てきて次はどうしようかなって考えてたら
靴屋のディスプレイを見てるカノンちゃん。
女物のパンプス。男物の革靴が綺麗にディスプレイされていた。
「入ってみる?」
『あ、いや、小さい時に母のパンプスに憧れてこっそり履いてたなってのを思い出してて』
初めて聞くカノンちゃんの話。お互いに身の上話を全くしない俺達の中で初めて話してくれたカノンちゃんの話。嬉しい。
「入ろ」
『え!ちょっと!!』
お店に入ると近くに居た店員に「この子に合うパンプス見つけて」とカノンちゃんを店員の方へずいずいと押し付けた。
カノンちゃんも店員もビックリしてたが店員がチラッと俺の足元を見て悟ったらしくニコッと笑って「こちらへ」とカノンちゃんを引き摺って行った。
普通にこんな若造2人がそんなこと言ったって相手はしないだろうけど俺の足元は20万の某有名英国メーカーの革靴だ。
足元見て価値が分かればそれなりに熟知した店員だろって任せた。