第3章 3
「え、ヤダよ。」
五条さんが嫌そうな顔で佳奈子に言った。
「えー!女の子1人で駅まで行かせる気!?」
「行けよ。すぐそこだろ。」
「ひどーい!」
「まぁまぁ、悟。送ってあげなよ」
五条さんが適当に佳奈子をあしらっていると傑さんがお茶を飲みきって、五条さんにニッコリ微笑みながら言った。
「はぁ?じゃあ傑が送れよ」
「彼女のご指名はお前だろ。俺は武笠さんを送ってくよ。」
『え?私ですか?』
突然、私に話を振られてビックリしていると五条さんはますます不機嫌な顔になるし夏油さんは凄い笑顔でこちらを見てくる。
なんて答えるのが正解なんだ...視線が辛い。
「ねぇ!早く出よ!」
『あ、はい、じゃあ、お願いします。』
彼氏が待ってるから急いで行きたいのか佳奈子が急かしてくるので、断ってしまっては失礼なのかと思いお願いすると夏油さんは笑顔で五条さんはサングラスの下からでも分かるくらいに不機嫌差が増した。
そんなに私の友達を送りたくないの?失礼じゃない?
支払いを夏油さんが全て済まし、お礼を伝えると「いいよ」と言ってくれて、みんなでお店の外へ出た。
五条さんはずっと私達から背を向けているので表情が見えない。
「それじゃあ、みんなまたね〜」
「悟、ちゃんと駅まで送るんだぞ。」
「うっせぇ」
佳奈子と五条さんが駅の方へ私と夏油さんが反対方向へ、五条さんはこちらを見ずにイライラしたまま夏油さんに返事をしていた。
佳奈子は五条さんが送ってくれるのが嬉しいのかニコニコしていて、五条さんと佳奈子の感情差が激しい…
『五条さん』
そう呼び掛けるとピタッと止まったが彼はこちらを向いてくれない。
『佳奈子の事、お願いします。』
「...じゃーね、カノンちゃん」
彼はこちらを見ることなく、そう言って佳奈子と2人で駅の方へと歩いて行ってしまった。
彼はなぜ怒っていたのか、自分のせいなのでは無いかと思ったら、どこで不機嫌にさせてしまったのか、彼に何か酷いことを言っていたのではないか、彼になんて声を掛けるのが正解だったのか...自問自答していたら彼の背中が見えなくなるまでそこから動けなかった。