第2章 2
「あ、お父さんねー!心配してくれるなんて良いお父さんじゃん!」
『五条さん、父が心配してるので私ここで失礼します。』
父のナイスタイミングの電話を好機と捉えて、名前を呼べ呼べコールをスルーしてさっさと帰ることにした。
「だから送ってくって」
『大丈夫です!本当にもうすぐそこなので!本当に!!』
全然すぐじゃないけど、家まで付いてきたらもしご近所さんなんかに見られたりしたらたまったもんじゃない!!
ましてや他人に家の場所を知られたくない!!
流石の私の気迫に「あ、そう〜」とさっき迄はしつこかった彼も今回は大人しく引き下がった。
『今日は送ってくださりありがとうございました。』
「いーえー、俺が勝手に送りたかっただけだしー」
『確かに、そうですね』
「ちょっとトゲありません?」
少しだけ彼に意地悪の仕返しをしてみた。
効果は全くなく彼はヘラヘラしてた。
「それじゃあ、 カノンちゃんバイバイ」
『さようなら』
そう言うと彼は背を向けて歩き始めた。
『五条さん、ありがとうございました。』
聞こえてないのか彼は振り向きもせず歩いてく。
彼は口も悪いし、性格も悪いと思う。
だから自分の気分次第で人が言われたら傷付く言葉も平気で言う。
私の名前を褒めたのだって気まぐれに言ってるだけだ。
『五条さん!!』
大きな声で呼ぶと彼は足を止めてコチラを振り向いた。
『送ってくれてありがとうございました!私、本当は荷物重かったし夜を歩くのも少し怖いんです!あと名前!褒めてくれて...う、嬉しかったです!!』
荷物の重さも夜道を歩く怖さも女の子は素直に言っていいけど、私は「男の子みたい」な女の子だから我慢しなきゃいけないと思ってた。
「かわいい」って言葉も私は素直に貰ったらいけないと思ってた。
私は「かっこいい」女の子だから。
それに彼は気まぐれに言ってるだけだろうから、それを素直に受け取ったら「単純なヤツ」と思われるのが悔しいから黙ってるつもりだった。
けど、大好きな親がつけた名前を褒めてくれるのはやっぱり嬉しかった。