第1章 1
パチパチパチッ
薪ストーブから薪の焼ける乾いた音が聞こえる、
乾いた音を聞きながら目線は手元にある小説の文字を追っている。
この物語も王子様がドラゴンを倒して、お姫様を助け出し
お姫様と結婚して幸せになるストーリー。
安直なストーリーだけど、自分の人生には絶対に起こりえない内容だからか魅入ってしまうのが物語の素晴らしい所だと思う。
昔お姫様だと信じてた自分は気が付いたら16歳の普通の女子高生
お城だと信じてた家は築十ン年の一軒家
王様だと思ってたお父さんは喫茶店のマスター
美しく優しいお母様は病気で入退院を繰り返している
見た目もふわふわのブロンドヘアとは程遠い黒髪のショートカット
背丈も気が付いたらニョキニョキ伸びて、「小さくて可愛い」とは言える身長ではなく、近年の低身長男子諸君と肩を並べられる程だ。
素敵なドレスも店の手伝いなので黒のハイネックのニットにスキニーパンツで茶色のエプロンには店名が小さく刺繍されてる。
ガラスの靴は勿論、動きやすさ重視のスニーカーだ。
これが私、武笠カノンだ。