第13章 11
先程までの騒がしさが一気に落ち着き、私の前を歩く灰原さんの足音とその後ろを歩く私の足音だけが響いた。
佳奈子達は本当に大丈夫なのか、未だに友達を置いてきた事を後悔しつつ黙って歩いてると灰原さんがピタリと足を止めた。
「カノンさんって夏油さんの彼女さんですか?」
『はい!?』
「え?違うんですか?」
『違います』
「ふーん、また明日って言ってたから仲良いのかなって」
『ないです、ないです。』
「あ、お家コッチですか?」
道を聞かれたタイミングで話が終わった。
確かに夏油さんは別れ際に「また明日」と言っていた。
また明日って言われて、こんなに不安になるのは初めてだ。
「カノンさんってなんであそこに居たんですか?」
灰原さんにそう聞かれて、肝試しの話からお互いの色々な話をした。
灰原さんは1年で夏油さんの後輩だと、五条さんと夏油さんは憧れの先輩だって目をキラキラ輝かせて色んな話をしてくれて先程までの緊張感が嘘みたいに薄れて、灰原さんの人柄にとても救われた帰り道だった。
「家ここなんですね!」
『灰原くん、ありがとう』
家に着いた時には彼の人懐っこさに親しみ「灰原くん」と呼ぶようになっていた。
『灰原くんのおかげで楽しかったよ』
「いえいえ、僕もたくさん話せて楽しかったです」
『また、今度お礼させて』
「ぇえ!?そんな気にしないでください!ありがとうございます!」
『ふふっ』
灰原くんの素直さが可愛くてついつい笑ってしまったら灰原くんはなんで笑ってるのか分からなかったらしく首を傾げてこちらを見てきた。