第12章 10
真っ赤に顔を染めて懇願する彼女はとても普段の姿からは想像付かない位に小さく見えて、潤んだ瞳はいつもより艶やかでもう少し眺めていたいから意地悪しようかと思ったけど止めた。
止めた代わりにコチラを見てる彼女の唇にチュッと小さなリップ音と一緒に軽くキスをした。
「これで許すわ」
『〜っ!!ここは外!』
「知ってる〜」
真っ赤になって手を振るう彼女を軽く避けて、彼女の手をもう一度握った。
「本当はね怒ってなかったよ」
『え?』
「カノンちゃんが俺の事を大好きなのも知ってた」
『な、なに?』
「部屋に行くと俺があげた靴を綺麗に飾ってるし、お土産も毎回ちゃんと飾ってくれるし、俺が初バイトで買ったお菓子も少しずつ大事に食べてたし貝殻もちゃんと飾っててくれてさ、気が付いた?あの部屋の3分の1は俺の物で溢れてるよ?」
俺の言葉に自覚が無かったのかカノンちゃんは少しフリーズしたが理解したのか顔がまた紅く染っていった。
「俺の事が大好きなカノンちゃんが他の男に目がいくわけないもんね〜♡」
真っ赤な顔で下を向いたカノンちゃんを覗き込む。
「俺が迷惑になるとか離れていくとかさ、なんで不安になるか俺には分からないけど...これだけカノンちゃんの事を見てて離れていかないんだからさ。少しは安心してよ」
そう言うとカノンちゃんは少し安心したのか眉毛が八の字に下がってまた目から涙がポロポロ落ちてきた。
「あとね、卑しくないから安心しな。卑しいのは俺の方。本当は毎日だってチューしたいし、1回じゃ満足できねぇんだから。卑しん坊は譲らねぇよ」
『な、なにそれ〜』
俺の発言に軽く笑うカノンちゃんを抱きしめて背中を撫でた。
緊張してるのかビクビクしながら俺の背中に手を回した。
少しして、落ち着いたカノンちゃんから体を離して手を握った。
「行こう。傑とオッチャン待ってるから」
『はい』
「すげぇ釣れて、オッチャンが帰ったら捌いてくれるって。硝子にも連絡して呼べってオッチャン言ってたし」
『はい』
「カノンちゃん...楽しいね」
『はい』
そう言うとカノンちゃんは俺の手を嬉しそうに握り返した。