第12章 10
水族館を出ると目の前が海で、まだ出てこない佳奈子達を海を見ながら待つ事にした。
...とても、とても、気まずい。
「ねぇ」
『はい!』
「今日、本当に楽しかった?」
『え?』
「流石に俺たち顔見知りじゃないし、友達は別の男とサッサと行っちゃうし、結構ボーッとしてたと思うし...気ィ使わせたよね?」
図星すぎて返事ができない。
水族館は良かった。
でも、初めて会った男と二人で行って楽しいかって言われたら気まずいだけだったし、所々でボーッとしたのは五条さんと来たらどうなんだろうと思ってたりしたからだ。
全部、分かってたのか...きっと彼もそんな私と一緒に回ってきっと楽しくなかったと思う。
『ご、ごめんなさい』
「謝らなくていいよ。逆に付き合わせてごめん」
『はぃ...すみません。』
「...一緒に来たい人、別に居た?」
『...』
「変なこと聞いたね」
『ぃ、居るンですけど、誘えないです。』
本当はこんな事、言うつもりなかった。
彼はほとんど他人だ。
でも、気を使わせてしまったからこそここは素直に話そうと思った。
『一緒に行きたいなって思うし、誘いたいなって思うけど...怖くて誘えないんです。誘って嫌がられたらどうしようとか私に誘われても嬉しくないだろうとかマイナスな事ばっかり考えちゃって』
「うん。めっちゃネガティブだね」
分かる。言ってる自分でも引くくらいにネガティブだ。
「マイナスな事ばっかり考える癖に今が楽しすぎて、楽しすぎてそれがもっと続いてほしいもっと欲しいって思う自分がすごく嫌です...こんなに何かを欲しいって思った事ないのに...そう思う自分がすごく怖いです。」
言ったら楽になると思ったら全然、楽にならなくてむしろ体は重くなる一方で頭を上げてるのが辛くなって下を向いた。