第10章 9※従兄弟/モブ女/出有り。
『何も無い』なんていつ言った?
あ、夏油さんに聞かれた時に言ったの聞いたのかな?
「俺、めっちゃムカついた。俺は嬉しかったのにカノンちゃんは無かったことにするンだって思ったから」
そうだったのか...五条さんに申し訳なく思った半面、五条さんも「嬉しい」と思った事に凄く胸が熱くなった。
『ご、ごめんなさい。そんなつもりで言ったわけじゃなくて...こうゆう事はあまり人にする話ではないと思って...』
「うん」
『初めての経験だったので、五条さんを見ていたら私だけこんなに慌てて恥ずかしがってるのが惨めに見えて怒ってしまって...すみません。』
「うん...」
そう言うと2人とも無言になってしまって、気まずい空気が流れた。
チラッと五条さんを見ると口元を手で覆って顔を伏せってしまってるので表情が見えなかった。
どうしよう...傷つけてしまったのか、それとも怒らせてしまったのか、五条さんの顔を下から覗き込むように見てみると五条さんは私の手を握り顔を上げた。
いつもみたい意地悪な顔をしてなくて、落ち着いた表情でこちらを真っ直ぐ見ていた。
「わかった。」
『あ、はい...』
「分かったから、もう1回キスしてイイ?」
『え!?』
予想外の言葉に声が上ずってしまった。
『なんで!?ダメ!』
「なんで?なんも無いって言われちゃったし、改めていい思い出として作り直そうかと」
『言ったのは申し訳無いと思いますけど、そう何回もするものじゃないし!!それに本当に無理!!』
「そんなに拒否られると傷付くわ〜なんで?」
『う...五条さん、歌姫さんとお付き合いしてるでしょ?』
「う、歌姫?」
私の言葉に五条さんが珍しく目を大きく見開いて白黒させてた。
あれ?おかしな事言ったかな?
「だれ?そんな怖いこと言ってる人」
『あ、誰かから聞いたとかじゃなくて、さっきコンビニで一緒に居たの』
「え!?あれが?歌姫?」
『そう、違うんですか?』