第10章 9※従兄弟/モブ女/出有り。
「うるさい!いま何時だと思ってるの!」
『お母さん!』
出てきたのは母だった。
「ご近所迷惑でしょ!喧嘩なら他所でして!仲直りしたら帰ってきなさい!!」
『え!ちょっと待って!喧嘩してないから!!』
「仲直りしたらねっ!!」
それだけ言うと母はさっさとドアを閉めて鍵をした。
...なんなの?親に締め出されるの2回目なんだけど。
項垂れてる私の手を五条さんは掴むと少し離れた公園まで引き連れてきた。
「ここ、座ってて」
五条さんに言われた通りにベンチに座ると五条さんは走ってどっかへ行った。
目で追うと自販機へ向かっていた。
仲直りするってどうすれば良いんだろう?
女の人と居たことにショックを受けたと言えば五条さんはなんて言うのかな...「そんなこと」?それとも「彼女面すんな」?
なんて言って逃げれるか、下を向いて考えてたら目の前に五条さんの大きな靴が見えた。
顔を上げると予想外の物だった。
“ミィ”
『...え?』
「見て!猫!」
五条さんの手には小さな子猫。
大きな目でこちらを見ながら可愛い高い声で鳴いた。
「自販機の横に落ちてた」
『落ちてた!?違うでしょ!元いた場所に返さないと親猫が!!』
「親猫居ないんじゃなーい。箱ん中に捨ててあったし」
『え?捨て猫?』
五条さんが見つけた自販機の所へ行くと、小さなダンボールが置いてあって蓋のところに“ご自由にどうぞ”と汚く書いてあった。
『そんな、酷すぎる...』
子猫を抱っこして思ったが少し体温が低いのか冷たく感じる。
箱の中の様子だとエサも水も何も無いから脱水も起こしてるかも...
着てたベストを脱いでダンボールに敷き、子猫を箱に戻すと箱を持って急いで歩き出した。
「え?どこ行くの?」
『病院!早くしないと死んじゃうかも!!』
「え?助けるの?」
『助けないの?』
「助けてどうするの?飼うの?飼えるの?現実考えなよ。」
五条さんの言いたい事、分かる...分かるけど。
『助けないで後悔するなら助けてから後悔する。』
それだけ言って、急いで公園を後にした。