第9章 8※8巻内容有り
ドォン、ドォンと少し離れたところから大きな音が聞こえる。
花火が始まったんだ。
拓海に行けないと断ったら、少し残念そうな顔してたけどすぐに笑顔を見せて「分かった。じゃあ、打ち上げ間に合うように頑張れよ」と言って、出て行った。
申し訳ない気持ちで一杯になった。
携帯がブブッと振るえたので見てみると佳奈子からのメールで“今どこ? 打ち上げ一緒に行こう”と着たので“ 準備室”と簡単に送った。
佳奈子が来るのかと思ったら悪戯心が働いていて脅かしてやろうと立て掛けてあるパネルの後ろへ隠れた。
少し経つと引き戸がガラッと開く音が聞こえたので佳奈子が来たと分かって、笑いを堪えるのに必死だった。
近付いてくる足音に息を潜めていると隠れていたパネルがいきなり動き出して突然、目の前が開けた。
「何してんのー?」
『え?』
佳奈子じゃなくて五条さんが居た。
「何してんの?隠れんぼしてたの?」
『え?なんで?』
「歩いてたら由紀子ちゃんに会って聞いたらココだって言うから」
『由紀子?...佳奈子でしょ?』
「そう、それ!」
何事も無かったかの様に笑う五条さんはいつも通り過ぎて、唖然としていたらこちらを見た五条さんが私のシャツの襟元を指で引っ掛けて首元を覗き込んできた。
「付けてないの?」
『な、なに?』
「ネックレス、気に入らなかった?」
五条さんに言われて、慌てて鞄の所へ行くと鞄からネックレスケースを出した。
「ちょっと、なんで付けてないの?」
『えっと...大事で無くしたら怖いので』
「付けなきゃ意味ないでしょ。貸して」