第9章 8※8巻内容有り
五条さんの細くて長い指が器用にペンダントの引輪を外して、私の正面からネックレスを付けてくれた。
「大事って事は気に入ってくれた?」
『えっと、気に入ると言うかとても綺麗で私には勿体なくて...』
「勿体ないとかは要らないから、気に入った?」
付けた流れのまま肩に腕を置かれて至近距離で真っ直ぐとあの碧眼で見つめられて、恥ずかしくなって目を伏せてしまった。
『気に入りました』
「良かった!この石、何か分かる?」
ペンダントトップを指で摘みながら五条さんが聞いてきた。
綺麗だとは思ったけど種類までは流石に調べてなくて分からない。
「ブルーサファイアだよ」
『ブルーサファイア...』
「石にもねそれぞれの意味があるんだよ。」
『意味ですか?』
「そう、ブルーサファイアにも意味があって“ 成功、誠実、慈愛”って意味があるんだ」
『そうなんですね、知らなかったです。』
意味を知って更にネックレスが魅力的に見えてきた。
『いつ帰ってきたんですか?』
「んーと、1か月前かな?」
『どこに行ってたんですか?』
「海が綺麗なところ」
『あぁ、だから貝殻と砂ですか...』
「可愛いの選んだんだよ。可愛かった?」
『白くて綺麗でした。』
「水筒...少し傷付けちゃったね」
『気にしてないです。なんで、七海さんに届けさせたんですか?』
「んー、ちょっとだけね...気持ち的に喪中だったの」
『そうだったんですね...すみません。』
「謝るところ?気にしてないから大丈夫だよ」
『ここ』
そう言って、五条さんの形の整った左眉の上を指で触れた。
『ここ、どうしたの?大丈夫?』
五条さんは少しだけ驚いた顔をしたけど、触れていた手を握ると「大丈夫」と言って、今度は私の胸の中心を指でさした。
「ここ、寂しかった?」
意地悪そうに笑顔で聞いてくる五条さんに少しだけ悔しかったけど、もう我慢ができなかった。
『寂しかった』
そう言うと五条さんは満足そうな笑顔で私の手を引いて抱き締めた。
「それは良かった」
唇に触れるだけの優しいキスをしてくれた。