第1章 1
二度と来ないだろう。
二度と会いたくない。
2日後に来た。
...どんな神経してんだ。
「でねー傑が、あ!傑って俺の友達なんだけど、俺が冷蔵庫に入れてるプリン毎回食べるからってプリンの中身を茶碗蒸しに変えてたんだよ!ありえなくない!?」
別に聞いてないのにペラペラと自分の事を喋り出す彼を複雑な顔で見てるのに気づいてるのか、気づいてないのか...彼はおしゃべりをやめる気配がない。
『あの!』
「ん?」
『これ!!』
おしゃべりを止めるために彼の前に先日のお釣りが入った封筒を出した。
『この間のお釣りです。』
「あ、お釣り。別にイイのに」
『そうはいきませんので』
「ふーーーーーーーん、てかさ」
「これ、俺?」
封筒を見ていた彼が私に向けて封筒を見せてきた。
忘れていた。
封筒に描いた似顔絵と「ムカつく奴」
咄嗟に封筒を奪おうとして手を伸ばすが華麗に避けられ、手が空を切った。
「これヘタすぎでしょ(笑)もっとハンサムに描いてよねー。美術1でしょ(笑)」
人が描いた絵を見てケタケタ笑いながら封筒に何かを書いていた。
.....この人、マジで性格悪いな。
でも、自分が悪いので反論せずに黙ってると
「はい」
『え?』
「これ預かっといて」
彼の言ってる事が分からず黙っていると
「俺、ここ来るからそこからお金払っといてよ」
封筒を見ると私の描いた似顔絵の横に私の描いた絵と対してレベル変わらないヒドイ似顔絵。
...てか、よく見たらサングラスしてない。しかも黒髪、シャツにネクタイ...もしかしてこれ私?
全く可愛くない似顔絵に下に書いてあった「ムカつく奴」が二重線で消されて、その下に新しく書かれていた。
「五条悟様」
一文字気になる字があったけど、その文字は性悪からは想像つかないくらいに綺麗な字だった。
封筒を眺めていると、スっと手が伸びてきて私の左手に重ねてきた。
「ねぇ名前、教えて。」
自分の顔が良いのを分かっているのだろう。
彼の性悪な性格さえ知らなければ、彼はおとぎ話の王子様だ。本当に。
でも、彼は王子様のフリをする悪い魔法使い。
そして私は王子様とお姫様を祝福する背景。