第9章 8※8巻内容有り
『ただいま』
「おかえりなさーい」
リビングに顔を出すと母がキッチンで夕食の準備をしていた。
『大丈夫?大変じゃない?』
「大丈夫よ、ずっと動かない方が辛いから」
『そう、じゃあ私お風呂掃除するね』
「ありがと〜」
そう言って、部屋に着替えに戻った。
荷物を置いて、ブレザーを掛けたところでコンコンと部屋に無機質な音が響いた。
久しぶりに聞く、無機質な音。
慌てて窓のカーテンを開けると久しぶりに見た白銀髪に夜なのにサングラスの五条さんが立っていた。
「よっ」
『こんばんは』
胸の奥がジンジンと温かいお湯で満たされてく様な感覚。
「あんまり時間が無いからすぐ帰るけど」
『え?そうなんですか?』
その言葉に声のトーンがあからさまに落ちたのが分かった。
五条さんは気にも止めずに続けた
「少しだけ時間できたから顔出した、元気にしてた?」
『あ、はい』
「文化祭の準備、頑張ってる?」
『うん。五条さんは?』
「俺は傑も居るから大丈夫」
『そっか、良かった。』
「あとさ、電話ももらっても出れないからゴメン」
『え?そ、そうなんですか?』
「うん。まぁ」
電話掛けたこと1回しかないけど、そう言うって事は電話を掛けるなって意味なんだろう...なんだろう、五条さんとの繋がりがプツプツと切れていく気がして、彼にもう会えない気がして少しだけ不安になってきた。
『分かりました...』
「じゃあ、そろそろ行くね」
『あ、待って!』
「ん?」
『ちょっとだけ待ってて!すぐだから!』
そう言って慌てて部屋に五条さんを置いて出て行った。