第7章 千日紅 *
side 五条悟
桃花...寝言で“恵”て言ってたな...。
寝言に特別な意味があるとは思っていないけれど...
妬けちゃうよねー。
「なぁ、先生ー?」
昨夜のことを思い出していれば、ソファーに座り両脇にツカモトとタカシを抱えながら映画に目を向ける悠仁が僕に話し掛ける。
「なぁに?悠仁。」
ツカモトとタカシをはべらせながら余裕で映画を見られているし、僕に話し掛けてまで来るなんて、悠仁も大分成長しているね。
「俺、先生と体術の訓練する以外はさ、ずっとここじゃん?」
「うん、そうだね。」
「今、夏だよね。」
「うん、そうだね。」
「夏と言ったらさ、プール、バーベキュー、海に花火...いっぱい楽しいことあるよね!?」
「うん、そうだね。」
「先生〜〜〜!!!せっかくの夏なのに、俺どこにも出掛けられずにずっと地下に居るだなんて嫌だ!!どっか出掛けたいっ!!海行きたい!!水着見たい!!うーみー!!みーずーぎー!!」
しばらく地下生活を続けて来た悠仁が遂に我慢の限界に達したのか、“術式が使えない”と伝えた時のように白くなってフニャフニャして出掛けたいと駄々をこねはじめた。
「はっ!!そうだ!!!花火!!花火見に行こうぜ!!8月にある俺の地元の仙台七夕の前夜祭の花火大会!!じぃちゃんの墓参りも行きてーし!先生、喜久福好きっしょ!?」
映画から僕に身体を向けて目を輝かせる悠仁。
「花火ねぇ...。」
そういえば桃花がこの間、新しく浴衣を買って来ていたっけ。
桃花の浴衣姿を見るのも良いな。
花火も喜ぶだろうしな。
たしかに久しぶりに喜久福も食べたい...。
「よーし、分かった!ナイスルッキングガイな先生が悠仁くんを花火大会に連れて行ってあげましょう!」
「やぁりぃー!!」
たまには悠仁にもご褒美は必要だよね。
桃花喜ぶと良いな。