第7章 千日紅 *
「と、いう訳で8月の5日に仙台へ行きます!」
夜、シャワーを済ませてベッドへ寝転び本に目を向けている桃花に、今日悠仁と話したことを伝える。
『わぁい!お出掛け!花火!...でも恵と野薔薇ちゃんも一緒に行けたら良かったのにな...。」
嬉しそうだけれど、ふたりのことを気に掛ける桃花。
本当、優しい子だよね。
「まぁた恵ー?たまには良いじゃない!桃花は少し恵離れしなさい。」
『ぇえー?恵が居ないと生きていけない!』
「........ふぅん。じゃあ、僕が居なくなったら?」
桃花が特別な意味や想いがあって言っているわけではないというのは分かっているのだけれど、“恵が居ないと生きていけない”だなんて面と向かって言われたら面白くないって思っちゃうよね?
『悟だって居なくなっちゃったら絶対、嫌っ!居なくなったら淋しくて死んじゃうっ!』
ベッドから飛び起きて僕にしがみ付く。
「そうだよねー?」
満足のいく答えが桃花の口から聞けて、うんうんと頷き桃花の頭を撫でる。
「そういえば初日の特訓はどうだった?」
『うん!真希先輩強かったっ!...はわっ!あと...私体力が無いから毎日走り込みと筋トレだって....。』
思い出して、漫画の一コマなら“がーん”という効果音が入りそうな顔をしてテンションの下がる桃花。
「ははっ、桃花は体力作り苦手だもんね。毎日頑張って!そしたらご褒美に花火大会、行こうね?」
また頭を撫でて言えば『うん!頑張るっ!』と意気込む桃花。
表情がころころ変わって可愛いな...。
最近では一緒に過ごす時間が長いから桃花の可愛さに触れる機会が多くて困るや。
恵がぞっこんになるのも分かるよね。
部屋の電気を消して額にキスを落とし、桃花をベッドへ横になるよう促す。
デスクに座り珍しく真面目に書類に目を通していればすぐに聞こえてくる規則正しい寝息。
昨晩は少し無理をさせただろうし、今日は相当しごかれたんだろう。
唇にそっと口付けて小さな身体に布団を掛けた。
「淋しくて死んじゃう、ねぇ...。随分と可愛いことを言ってくれるよね、うちのうさぎちゃんは。」