第18章 ヤマモモ *
カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めると、腕の中にはすよすよと気持ち良さそうに眠る桃花の姿。
いつもと違うのは桃花が俺に抱きついているのではなくて、俺が桃花を抱き寄せていることと、お互い何も身に付けていないということ。
何度も同じ夢を見てきたけれど、今回こそは夢ではないらしい。
腕の中の愛しい幼馴染の額にそっと口付けシャワーを浴びようとベッドを抜け出そうとすると、焦げ茶色の長いまつ毛がふわりと揺れて桜色が目を覚ます。
『...ん...めぐみ...?』
「悪い。起こした?シャワー浴びようかと思って...。」
『...ぃっちゃ、やだぁ...。』
甘い声で擦り寄ってくる桃花は仔猫のようで可愛らしい。
幼い頃から目覚めた時に隣に居ないのを嫌がっていた。
今もそれは変わっていない。
『...ぁ、れ...?めぐみ...は、裸...っ!?お洋服!着ないと...!?』
とろとろと眠たそうだった目はぱちりと開き恥ずかしそうにきょろきょろと忙しなく動いている。
「桃花も...『はゎ!?み、見ちゃだめ...っ!』
俺が何か言う前に自身も何も身につけていないことに気がつき両手を伸ばして俺の目元を覆う。
少し前まであんなコトやこんなコトをしていたというのに、それでもいつものように恥じらう桃花は可愛らしい。
「昨日もう全部見た...。」
『...っ!恵のえっち...!』
「嫌いになった?」
『...ならないもん..っ。すき...だもん...っ。』
返ってきた返事にほっと胸を撫で下ろす。
一線を越えてしまったら今まで必死に大切にしてきた関係が崩れてしまうのではないかと本当は怖かった。
「恥ずかしいなら目瞑ってろ。」
俺の目を覆う両手をそっとよけてそのまま指を絡めて握り唇を重ねると素直に目を瞑る桃花。
『ん...。』
昨夜の余韻に浸るようにゆっくりと舌を絡ませ合う。
このまま再びベッドへと押し倒したくなってしまうけれど、側にあった俺のTシャツを拾い上げ桃花にすぽりと着せる。
「ほら。これ着て。」