第1章 序章
ふんふんと周りの匂いを嗅いでいると宇髄が戻ってきた。
「許しが出た。これよりお前を鬼殺隊本部へ連れていく。」
「本部って…私みたいな余所者を入れていいの?」
「言いわけねぇだろ。見張りが付く。」
「そう。いや、よく考えたらそうよね。」
それからはまた抱えられて走る走る休憩走る。この男、体力ありすぎでは?あんな休憩ちょっとでこれだけ走れるって…
「よし、おい、目隠し付けろ。」
「…えぇ?」
突然の発言に首を傾げる。目隠し?なんで?えっと…目隠し?
「あ、貴方まさか本部に行くとか言いながら…」
「ちげぇわ!その本部の場所がバレねぇためだっつの!馬鹿にしてんのか!」
「いやいやいやいや、そんなの信用できるわけ無いじゃない!そっちこそ馬鹿にしてるの!?」
目隠ししろなんて言われたら誰だって疑うと思う。信じろなんて言われても無理な話だ。
付けろ、付けない、どっちも主張を曲げないから話が進まない。いつまで経っても本部に行けないのは分かっているが、これで連れて行かれた場所が本部じゃなかったら絶対後悔する。
「いいから早く付けろ!」
「だーかーらー!それで連れて行かれた場所が本部じゃなかったら…ひっ!?」
私は宇髄が窓から入ってきた時より分かり易くビクッと体を震わせる。宇髄の後ろに傷だらけの目が血走った男がいたからだ。宇髄と同じ様に刀も持っていたのが何より怖かったが。
「う、うず、宇髄っ!後ろ、後ろ!」
「あぁ?ただの不死川だ気にすんな、それより付けろ」
「ただのシナズガワって何ねぇ!?」
「…おい宇髄ィ、何してんだァ」
「わぁぁぁぁ!!!!」
ただのシナズガワさんが喋ったああああ!!!と言うかなんで宇髄は後ろを振り向いてもいないのに人がいることが分かったんだ、しかも誰がいるかまで判別つくものなのかな!?
「…不死川、お前、随分っ、怖がられてんなぁ…!」
「見たらわかるから笑うのやめやがれェ」
「まっっっ、宇髄、宇髄!!こっち来た!シナズガワこっち来た!!」
ここでとうとう堪えきれなくなったのかブハァ!と腹を抱えて笑い出す宇髄。ちょっ、シナズガワこっち来たんだって!守ってよ!いや連れ出してもらう時に守れとは言ってないけど!
「笑い事じゃないのよ宇髄!!こっちは本気でっ!」
「まぁ…落ち着けって…ブフッ…!」