第1章 序章
「どう落ち着けと!?あといい加減笑うのやめなさいよ!やっぱり馬鹿にしてるでしょう!」
ギャーギャー煩い私と腹抱えて悶えてる宇髄。落ち着くまで待たせてしまったシナズガワさんには少し罪悪感を感じた。
「ヒー、ハー…巫女、こいつはさっき言ってた見張りの一人だ。」
「みは…え?」
「巫女だァ…?」
聞くとシナズガワ、でなくて。不死川さんは見張り八人のうちの一人らしい。本人も本部へ呼ばれたと言っているし嘘では無いようだ。
「巫女だかなんだか知らねェが、お館様に少しでも変なことしてみろォ…斬るからなァ」
「…か、勝手になさったら?」
嘘です。斬らないで。
それから宇髄に無理やり目隠しされて連れて行かれた場所は確かに『鬼殺隊本部』だった。表札に書いてあったわけでは無いが、不思議とそう思えた。
宇髄に抱えられたまま移動する。庭に行くらしい。
「わり、遅れたわ。」
「あら宇髄さんに不死川さん。遅かったですね?…あら?その人はどちら様ですか?」
「む!遅刻は誰にでもあることだが、部外者を入れるのは頂けないぞ!宇髄、不死川!」
美しい庭に連れて行かれて真っ先に私に気付いたのは蝶の髪飾りをつけた女性と、獅子を連想させる様な髪型の男の人だった。
「まぁっ!可愛い…!」
「おい、本部にその様などこの誰かもわからない奴を入れるとはどう言う神経をしてるんだ。二人とも俺より先に柱になった癖にそんなこともわからないとは…お前達には心底失望した。」
「南無…そこに誰かいるのか…?」
「…」
皆口々に話し始める。だが私にはそんな声は届いていなかった。
個性強すぎじゃない?
私もう宇髄と不死川さんだけでお腹いっぱいなのだけれど。なんで胸元開けてんの?なんで蛇巻いてるの?めっちゃ泣いてるし最後の人は最早喋らないし…駄目だ、キャパオーバーである。私は考えるのをやめた。
「お前ら全員、こいつの件で呼ばれたんだよ。」
「この子のですか?普通の女の子にしか見えませんが…」
「そうね…ねぇ、お名前はなんて言うの?」
桃色の髪の女の人が詰め寄ってくる。が、ここで一つ。
私、名前を覚えていない。
数年呼びも書きもされなかったんだから覚えてたほうが不思議である。
「えっと…そうね。名前…。」