第2章 柱〈前〉
そりゃありますよ柱をなんだと思ってるんですか。と毒を吐かれた。辛辣ぅ。
「それはそうと不死川さん。どれだけ頑張ってもあと三日はここから出さないので諦めて下さい。」
未だ動かそうと手に力を込める不死川さんにやんわりと言う胡蝶さん。どうやら不死川さんが任務に行くと聞かないらしい。
「働き者ね…いいことだと思うわ。」
「貴女人の話聞いてました?働かれたら困るんです。」
ニコニコした黒い笑顔が私に迫る。思わずヒエッと小さく悲鳴を上げてしまった。真面目にした方がいいなこれは。
「不死川、動けないことには鬼殺は無理でしょう。大人しくしたら?」
「掌返しやがってェ…」
黙れ、私はいつでも美人の味方なんだ。胡蝶さんは美人だから私は胡蝶さんの味方。これら全ては言い訳である。
「お、起きたのか?」
「あら宇髄さん。煉獄さんも。」
胡蝶さんの言葉に体が反応した。本能的に不死川さんの後ろに身を隠す。不死川さんの影からひょっこり顔を出し覗くと、宇髄と煉獄さんがいた。
「何してやがる」
「黙りなさい」
不審がる不死川さんを丸め込み私はギュッと掌を握る。四人とも首を傾げていたが、次第に怪我はどうだだの話をし始めた。宇髄が隣に座った。不死川さんが嫌がるから私も必然的に離れるんだけど。
「ったく…頑張ったんじゃねぇの」
観念して離れたところから私の頭を撫でる。撫でる、といっても掻き回す感じのぐしゃぐしゃだったけど。嬉しかったから怒りはしないが。
「少女!下弦相手に何事もなく何よりだった!」
「ひ…かげん?」
煉獄さんがむんっと近づいて来て私が距離を取る。皆の視線が集まった。…うん。明らかに不自然だったね今の。
「緋縁、煉獄がどうしたんだよ。」
「なんでもない、わよ?」
「嘘つけ顔真っ青だぞォ」
あれ、そんなに顔色悪いかな。胡蝶さんも煉獄さん本人も心配そうにこちらを見ていた。
「煉獄さんが放った呼吸が怖かったんですか?」
「…火は、苦手なの。」
「む、そうなのか!」
苦手というか軽くトラウマである。なんとか絞り出した声を拾った煉獄さんが頷いた。君に何かするわけではないから安心しろ!などと言いながら宇髄よりずっと優しく頭を撫でた。ぽんぽんって叩いたの方が正しいかも。その行動で煉獄さんへの怖さは少しは薄れた…気がする。
「火が苦手…ふむ。」