第2章 柱〈前〉
考えろ、考えろ考えろ。どうしたら助かる。どうしたらこの鬼を撒ける。日の出はいつだ。今は何時だ。ああもう情報が少ない!こんなんで考えがまとまるか!誰だよ前世で「考えろ」を繰り返したら勝利フラグが立つって言ってたの!何にも思い浮かばねえわ!あ、言ってたの自分じゃん。
「キキキ…」
「助けて宇髄いいいい!」
ゴウッ!
赫い虎が舞う。スパンと頸が斬れた鬼に目を見開いた。え、とら?あか、炎じゃん。みるみる血の気が引いていく。
「少女、無事か!」
ガタガタと足が震えて煩い。炎、ほのおだ。赫い、熱い、あの時の−−−−−−−−。
知ってる?ーー。
何が?
人がなんで生まれるか!
えー?そんな大層なこと知らないよー
あはは!教えてあげよっか?
…教えて。
それはね、
「…なんだったかな。」
目を覚ました。風柱邸ではない。ここは…蝶屋敷か。ちょっと私気絶とか多くないかな。外の世界は過酷なんだなぁ…。
「あれ…なんで涙…」
珍しくあの子の夢を見たからか。母さんが名付けてくれた名前を思い出せないからか、あれから先の言葉を思い出せないからか。涙を拭って深呼吸をした。鬼に襲われたんだ。不死川さんを探してたら戸が崩壊した。それから虎が…そこまで思い出してまた手が震えた。
「…なっさけない。」
情けない。火を見ただけで思い出して気絶するなんて。でも、あの時に戻ったみたいでほんとに怖かった。またあの子が目の前で焼かれるのを黙って見なきゃいけないのかって。また、あの子の最期の言葉が聞けないのかって。
「…緋縁さん?」
「?」
声が聞こえたから見てみれば、青い蝶の髪飾りを左右につけて、髪をツインテールにした女の子がいる。なんで名前知ってるんだ。あれ、でもあれは胡蝶さんと同じ髪飾りだぞ。じゃあこの屋敷の人か。
「しのぶ様を呼んできます。」
「お、ねがい。」
あまりにも呆気ない登場にポカンとしながら返事をした。暫くぼうっとしていると足音が聞こえた。
「おそようございます、緋縁さん。」
「…そんなに?」
「二日間です。」
「あっ…」
知らない間にそんなに寝てたのね!!ごめんなさい!!胡蝶さんに簡単に診察してもらう。骨折も悪化したわけではなく、ほんとに軽傷らしい。
「何故そんなに眠りこけてたんです?緋縁さん。」
「えっと…?」