第2章 柱〈前〉
不死川さんの助けは期待できそうにない。なら自分で、と言いたいところだが、武器さえ持ってないから何も出来ない。えええ…これ助かる方法無くない?神様に見放されてない?
「間違いなく死んだ…」
そう言う間にも鬼は一歩一歩近づいてくる。その足取りが如何にもこういうの慣れてますって感じで。
−−−−−−−少し、腹が立った。
慣れてるってことはそれだけの人を手にかけてるってことじゃないか。そんなことよく平然とできるもんだ。鬼に恨みは無いけど、同胞が、同じ人間が殺されるのは、いい気分ではない。
「どう、しようかしら。苛立って仕方がない。」
意外にもこんな命の危機に瀕していても冷静だと思っていたが、全然そんなことはなかったらしい。私は駆け出す。鬼に向かって。それから、近くに落ちてたそこそこ大きい石で鬼の無駄にでかい目を潰した。いや、別に痛くなくてもいいんだ。イライラを抑えられたらいいなってのとあわよくば逃げれたらいいなって思ってただけだから。
「あああアアアあ嗚ァァ呼あアあアあアアアあ亞ああアああああああアアアアアああアアあ!!!!!!!!」
鬼の金切り声が響く。プレゼントはお気に召さなかったらしい。なんだ、残念。
「オマエオマエオマエオマエ!!!」
「そんなに呼ばなくても聞こえてるわよ鬱陶しい!付いて来ないで!」
兎に角風柱邸まで必死で走った。中には不死川さんがいるはずだから。いや動けないっつってるのに鬼連れていくのもアレだけど。
「不死川ぁ!助けてぇ!」
バタバタと自室のドアを開ける。…っていねぇ!?どこ行ったんだ!?まさか入れ違い!?うわあ戻って来なかったらよかった!
「ニ我 ͜×ナイ!」
逃してぇ!?激おこ状態の鬼さんに私が勝てるはずもなく。本当やめてほしい何この無理ゲー。攻略本が来い。
「不死川!どこおおお!?」
屋敷から出て行こうとするも戸が崩壊した。たった三寸の小石で。鬼が投げたらしい。こんなことまで可能なのか。なんということだろう。
「どこに、に、逃げ…」
厨の方、じゃなくて庭、だめだ鬼のいる玄関を通らないとどこにも行けないだろう!ちょっとは落ち着け!いや落ち着いたら死ぬ!考えろ!
こういう時に限って冷静に物事を判断できない自分が憎たらしい。どうしてこんなにも役立たずなのか。私ったらこの野郎。
「もう…!」