第2章 柱〈前〉
つまりまた異能を使って欲しいと。そういうと耀哉さんは肯く。やっぱり遅い方がいいもんね。
「じゃあ近づいて…使いますね。」
「お願いするよ。」
目を閉じ意識を集中させる。髪が浮く感覚で術が発動しているのを自覚できた。ほんと便利すぎるなこの風。なんでもっと早くつけなかったんだろう。
異能を発動しながら考える。耀哉さんに異能を使ったのは一週間少し前。ということは大体一週間で異能を使いにこなければいけないのか。いや、等間隔と決まったわけではないな。多めにかけとけばそれに比例して長くなるかも…。
(いいや、いっぱいかけちゃえ。)
四半刻ほどかけ続けて終わる。随分長かったね、と耀哉さんが言うので先程の仮説を説明すれば確かにそうかもしれないなんて言いながら納得した。
「わざわざありがとう。手間をかけたよ。」
「お気になさらず。どうせ暇でしたし。」
「今は実弥だったね。どうかな。」
その言葉に私は顔を顰める。なんとも言えず、といったところだろうか。その反応で察したのかおやおや、と笑った。
「そう言えば、私と別れた後は大変だったそうだね。」
「…あぁ、あの変なのですか」
耀哉さんが肯く。いやぁ、あれは面倒だった。耀哉さんはあそこは産屋敷の名で黙らせたと朗らかに言った。あれ、それって何気にすごいことなんじゃあ。矢張りこの家や支給された柱の家からしてそこそこ権力とかはあったりするらしい。流石、伊達に千年続いてないね。
「…ひとつ聞いてもいいかい?」
「なんですか?」
「緋縁は私の子ども達が君のことを認めたら、私の『子ども』になるのかな?」
首を傾げて彼は笑う。どういう、ことだろうか。私の様な馬鹿にも分かる様に言って欲しい。これだから耀哉さんは。
「ならないですよ。なったら『耀哉さん』って呼べないじゃないですか。」
「…ありがとう。」
私もにこりと微笑んだ。どういう含みがあるのか知らないが、私は彼を耀哉さんと呼びたい。理由なんてそれだけで十分だ。
「随分時間をとってしまったね。暗くなる前にお帰り。」
「いえ、こちらこそお時間取らせました。失礼しますね。」
「今度は五つ子とも遊んであげておくれ。」
「はい、分かりま…五つ子?」
どうやら耀哉さんは五児の父らしい。双子とか三つ子ならまだしも五つ子て。あまねさんを尊敬した。