第2章 柱〈前〉
骨折してから三日目、痛みも無くなってきた頃に、ある鴉から伝言がきた。
「耀哉さんが?」
「はい。本部に来て欲しいとの伝言です。なんでも二人で話がしたいそうで。」
鴉の言葉に首を傾げる。と言うかなんで鴉が喋ってんだとかそう言うのはなしだからな。私は考えるのをやめてるんだ。
「んー…何かしら。」
「詳しくは本部で。体調が優れないのでしたらまたの機会にしますか?」
「いえ、行くわ。痛みも引いてきたし。」
「ではそう伝えさせていただきます。隠は手配してますので、門の前に出ていただければ。」
コクっと頷いて飛び立っていく鴉。不死川と宇髄、蜜璃ちゃんに出かけることを伝えて屋敷を出る。皆仕事してるし、邪魔しちゃ悪いしね。耀哉さんも二人で話したいって言ってたし。
「緋縁様ですね?」
「えっ…はい。」
黒ずくめの人から名前を聞かれ肯く。あ、隠って人か。この前隠がなんだか聴きそびれちゃったな。今度聞こう。
背負われ暫くすると見覚えのある屋敷に着く。隠さんと別れて門の前に立った。勝手に入ってもいいものか。迷っていると門が開く。
「お待ちしておりました。緋縁様。」
「…はい。」
誰だこの美人。そう言えば前にあった双子ちゃんと似てる様な…そんなことを考えている間に耀哉さんがいる部屋まで案内してもらった。
「おはよう、緋縁。」
「おはようございます。耀哉さん。」
挨拶をして座る。やっぱりこの人のそばだと落ち着く。『私』でいられる。さっきの美人は耀哉さんの奥さんらしい。何それうらやま。
「お話というのは?」
「呪いのことなんだけどね。」
そのワードに自然と体が強張った。耀哉さんを蝕む呪い。この前異能を使って進行を遅らせたーー耀哉さん談ーーらしいが、何かあったのだろうか。
「やはり見立て通り、進行がとても少しづつになっている。」
「ほ、ほんとですか…!?」
本当だよ、と耀哉さんは微笑む。
「事実、爛れも広がっていないだろう?広がっていても少量だしわからないかもしれないけどね。」
「耀哉さんは、分かるんですか?」
「私の体だからね。」
うん。相変わらずの暴論。自分の体だからなんでも分かるなら癌に気付かない人はいない。
「今は?」
「今はもう通常の速度に戻ってしまっている。」
「あ、だから呼んだんですか?」
「うん。」