第2章 柱〈前〉
なんてこと言うんだこいつ。
「い、や、誰もそんなこと」
「指導してやれよ、不死川!」
「話聞いてた貴方!?」
殴りたい、このニヤケ面。仕返しか?この前の蜜璃ちゃんの頭突きの仕返しなのか?ギリィ…と思わず歯を噛み締めた。
「んじゃぁ竹刀持ってみろやァ」
「なんでノリ気!?やらないって!」
押し付けられた竹刀を両手で持つ。なんでこんなことに!?そうだあの筋肉達磨のせいだ!!
「ちょ、ね、えええええ!?」
不死川さんが急に飛んでくる。あまりの速さに防御もできず腹部にモロに受けた。まってメキッて言ったよねぇ!
「いっっっつぅ…痛いぃぃ…」
「なんだァ、弱ェなァ。」
拍子抜けした様子で不死川さんが寄ってくる。涙で視界が滲む。本当痛い。絶対痛々しい痣ができてる。あんの筋肉達磨めぇぇぇぇ…
「大丈夫かァ」
「そんな訳…な…」
どんどん意識が遠のいていく。あぁ、もう、無理。本当無理。
「宇髄ィ」
「どうした。言っとくが一般人なんてそんなもんだからな。」
「コイツ、息してねェぞォ」
「そんなわけ…おい冗談だろ?」
驚いた宇髄と蜜璃ちゃんが駆け寄ってくる。言っとくがお前のせいだからな筋肉達磨!!
あーもう駄目だ死んだ。私死んだわ。バイバイ皆、バイバイ蜜璃ちゃん…
「…あれ?死んでない…」
「物騒な事言ってんじゃねェ」
死んだと思ったのに…どうやらそんなことはなかった様だ。横にいた不死川さんが突っ込まれたのが何よりの証拠だ。
「骨折だとよォ」
「骨折…初めてしたわ…」
ポカンとして不死川さんを見る。何処か気まずそうだ。そらちょっとつついただけで骨折なんて驚きだろうなぁ…私なら一緒にぶっ倒れてる。
それから遅れて気付いた。宇髄さんと蜜璃ちゃんがいないし。そもそもここ…不死川邸じゃない。
「ここは…」
「蝶屋敷。」
「蝶屋敷…」
「怪我をした隊士が養生する胡蝶の屋敷だァ」
「はぁ…あの人の…」
胡蝶さんは…あの蝶の髪飾りの人だよな。あの人の屋敷…病院みたいな場所なのか。
それにしても、骨折。初めてした…''人一倍怪我に気をつけないといけない''のに…
「いやぁ…迷惑かけたわねぇ…」
「迷惑かけたのは俺だろうがァ。」
「いや、不死川は力加減は間違えてないわ。私が貧弱なだけなの。」