第2章 柱〈前〉
「ここが不死川の?」
「おう、風柱邸だ。」
「かぜばしら?」
「不死川さんは柱の中で風柱って呼ばれてるの!風の呼吸を使うからなのよ!」
「かぜのこきゅう…?」
次々と出てくる知らぬ単語に宇髄邸で教えてもらってたらと後悔した。今週中に聞いておこう…。
まぁそこら辺の話は後でするとして。一先ず戸を叩く。ノックはどこの時代でも常識である。
出てくる気配はない。もう一度叩いた。
「…いない?」
「いや、今から向かうと鴉を飛ばせたからいるはずなんだが…」
嫌な汗が伝う。まさか何かあったのでは…?もう一度戸を叩いた。
「不死川!在宅かしらー!」
またしても返事は無い。いや出て来ないんかい。かなり大声で呼んだぞ。そろそろ本気で心配になって来た。
「なんだァ」
「あら、不死川。不死川が返事をしなくて…って不死川いた!」
「不死川さん!一週間ぶりね!」
「おォ、宇髄もなァ」
わぁ意外と社交的。やっぱり柱の中にも好き嫌いとかはあるのかな。そんなことを思いながら家に招いてもらった。
「…うわぁ」
「なんか言ったかァ」
「いいえなんでも。」
宇髄邸みたいな感じかと思いきやなかなかに殺風景な屋敷だった。なんか、必要最低限のものしか揃えてません、みたいな。与えられた部屋にも布団と簡単な机のみ。うわぁ、としか言いようがない。屋敷案内の時もまっさらな部屋が多くて宇髄に引かれていた。本人曰く風柱邸よりも藤の家紋の家にいる方が多いんだから家にもの置いても仕方ない。らしい。
「宇髄、藤の家紋の家って?」
「鬼殺隊に援助してくれる場所だ。宿を無償で提供してくれる。」
「へぇ…」
食事や風呂、怪我した場合は医者まで呼んでくれるらしい。そんなにしてくれるのか。やっぱり人の支えなくして組織は回らないよな。
「隠も鬼殺隊を支えてくれる人達よ!」
蜜璃ちゃんも言葉にあぁそれ、と相槌を打つ。確か耀哉さんのお屋敷で蝶の髪飾りの人が言ってた。
「そう言えば、あの蝶の髪飾りをつけた人ってなんて名前なの?」
「しのぶちゃんのこと?」
「鬼殺隊蟲柱、胡蝶しのぶだ。蟲の呼吸を使う。」
「ほええ…宇髄と蜜璃は?」
「何がだ?」
「だから、不死川は風柱でしょ。胡蝶とやらは蟲柱。宇髄と蜜璃は?」
「あぁ!なんだと思う?緋縁ちゃん!」
「えぇ…可愛い柱?」