第2章 柱〈前〉
私は苛立っているのだ。あれから監視されるかの様に睨まれ嫉妬され…ちょっとの愚痴ぐらい許しやがってほしい。
「はぁ…すっきりした。治すわ。」
「別にこれぐらい…」
「頭は危険なのよ。脳に異常があったら…」
「その頭に甘露寺ぶつけて来たのはどいつだよ」
「てへ」
舌を出しながら宇髄の横に座った。よし、準備オーケー。目を閉じる。今回から改良に改良を重ね、治療中は魔法陣もどきーー聞いた話だと魔方陣ではなく紋様のようなものらしい。なので今度から紋様と記載するーーから風が出てくる様にした。完治したら風が止まる感じ。改良の仕方は企業秘密である。
ふわ、と髪が風に乗り跳ねた。よしよし、ちゃんと機能してるな。宇髄のところまで風が飛んでるのか、私の横で布の擦れる音が聞こえる。紋様は術者、つまりは私と怪我人が入る感じで広がるらしいから、宇髄にも風が当たるのだろう。実践したことがなかったからどうなるかと思ったが、杞憂だったらしい。
風が止む。目を開き宇髄に状態を聞くと完治してるとのことだった。やった完璧じゃん。大したもんだな、と宇髄に言われ尚のこと達成感が傘増しする。
「取り敢えず、お嫁さん達に謝りなさいよ。」
「分かってるっての…」
そう言う宇髄に安心して部屋を出た。これで今日と明日は心地よく過ごせそうだ。
翌日、無事に解決したのか存分にイチャイチャする宇髄家にあのままにしておけば良かったと思うくらいには振り回され、次に日に私、宇髄、蜜璃ちゃんの三人は宇髄邸を発つことになった。
「いつでも遊びにきてくださいね、緋縁ちゃん。」
「行ってらっしゃいませ、天元様!」
「甘露寺様も、緋縁も!」
奥さん達の嫁嫁戦争とか心配だったんだけど、三人が仲良しで良かった。心置きなく宇髄邸に遊びに来れる。改めてお礼と挨拶をして屋敷から離れた頃、私は荷物の入った風呂敷を握りしめた。
「次は…あの人かぁ…」
傷だらけの体、血走った目、何故か盛大に露出されている胸板。
不死川邸での一週間だ。