第2章 柱〈前〉
「私が『あの部屋』にいた頃の常連ね。定期的に来てたわ。」
「あ、あの部屋?」
「んなら、政府に渡せばなんとかってやつは。」
「誰かが私の情報を警察か何処かに話したんじゃない?華族なんて腐るほどいたし。」
「華族?」
「じゃないとあの村はあっこまで裕福になんてならなかっただろうしな。」
「裕福?」
状況が理解できない蜜璃ちゃんにはわからないだろうけど、あの部屋から私を連れ出した宇髄ならわかる話だ。
「お館様に報告しておく。」
「えぇ、お願い。」
そう言い残し宇髄は部屋から出て行った。
「えぇと…緋縁ちゃん…」
「…私、蜜璃のこと大好きよ。だから、話すわ。」
それから私は話した。話して行くうちに蜜璃ちゃんの顔が青ざめて行くのが分かった。でも、正直に話さなきゃ、隠し事してるみたいで嫌だから、全部言わせてもらった。
「そんな、そんな酷いこと…」
「そんなにかね…まぁ、「それぐらい」って言われるより、ずっとずっとマシね。」
私のことで悲しんでくれる蜜璃ちゃんは、本当に優しい。そんな蜜璃ちゃんだからこそ、話せたのかも。宇髄なら話してない。
「…ありがとう。蜜璃のこと、大好きよ。」
「うんっ…私も緋縁ちゃんのこと大好き…!」
二人で手を握った。この先も蜜璃ちゃんみたいに皆と打ち解けられるのかな…不安はいっぱいだけど、今は蜜璃ちゃんとの時間に浸っていよう。
あれからまたいろんな話をした私たちは、一緒にお風呂に入って、お嫁さん達の手料理を食べて同じ布団で寝た。明日から一週間、頑張ろう。
宇髄は悩んでいた。それもこれもあのガキ…じゃなく少女、緋縁についてだ。
彼女はあんな高飛車な態度をとる割には僅か一日で嫁と仲良くなり、甘露寺に関してはもう信頼しきってるようで緋縁、緋縁とベッタリ。甘露寺、自分たちはそいつを見極めるためについてるんだぞ。おい俺の嫁に二人して抱きつくな。
いや、宇髄とて彼女達の関係に口を出すつもりは無い。女の馴れ合いなぞそのようなものだろう。
しかし、しかしである。嫁達の話といえば今日緋縁がだの甘露寺がだの、しまいには五人揃って風呂に入るほどである。今までは自分が一緒に入っていたのに、だ。これがどう妬かずにいられようか。閨房での夜の戯れさえ二人に声が聞こえるからとお預けばかり。地味に我慢してたが限界なのだ。