第2章 柱〈前〉
振ってきた声に目を見張る。間違いない、宇髄だ。来てくれた。夢じゃ、なかった。
「よぉ、昼寝は楽しかったか?」
気付くと宇髄の腕の中に収まっていて声が近くで聞こえてきた。やっぱり行動一つ一つが静か過ぎて速過ぎるんだよな。忍者みたいだ。
「目覚めは最悪だったけれどね。」
まだ涙が止まらないけど精一杯強がって見せた。だって怪我とかはしてないし。重度のセクハラにあったけど。
「な…え!?」
男は私が音もなくいなくなってずっと吃驚してる。それから何を思ったのか自分が封鎖した大通りで誰かあいつを捕まえろと騒ぎ出した。周りには護衛の人しかいないのに。あ、護衛さんに言ってるのか。
「なんなんだお前!あとちょっとでその女を捕まえられたのに!」
「こんなやり方しか出来ないのかよ、はっ、だっせぇ。もっと派手な口説き方勉強してから来な。」
「宇髄…」
目隠しとかしたのにあんた人のこと言えないわよ。と言おうとしたが落とされそうだからやめておいた。
「ふざけるな!その女を政府に差し出せばいくら金が出ると思ってんだ!そうじゃなきゃそんな化け物…!!」
「…お前」
「いいわ、宇髄。早く帰りましょう。って、買い物してないじゃない…」
はぁ、と重いため息をつく。これは冨岡さん家行くの待ってもらわなきゃだな…朝一買いに行けば間に合うか?
「…チッ。」
宇髄は私から刀を退けた時より盛大な舌打ちをしてから高く跳躍し大通りを抜ける。なんか…もう…慣れっこだわね。慣れって大事だ。化け物なんて言われてもこんな高く飛ばれても何も思わない。
「…あれ?あそこにいるの、蜜璃じゃない?」
「あぁ、足止め頼んでたんだ。甘露寺!もういい!」
宇髄がそう叫ぶと声を拾った蜜璃ちゃんも高く跳躍した。緋縁ちゃん!蜜璃ちゃんの可愛い声に思わず綻んだ。うん、やっぱり可愛い。
そのまま走り続けたどり着いたのはおっきなお屋敷。耀哉さんのお屋敷には劣るけど。
「ここは…」
「俺ん家。甘露寺も泊まってけよ。」
「はい!お世話になります!」
宇髄の家…でかいな。柱ってそんなに偉いのかな。やっと下ろされとてとてと興奮気味に宇髄家に近づく。いくつになっても他人の家に入ると言うのは楽しみなのである。
「おーい、まきを、須磨、雛鶴、帰ったぞー!」
「お邪魔します!」
「お邪魔…します…!」