第2章 柱〈前〉
視線を足に移した。白い足袋の奥には、きっとあの擦り傷だらけの足があるのだろう。靴を脱いだ時気付かれない様に振る舞っていた様だが、その前から足に疑問を持っていた甘露寺には無駄だった様だ。
「きっとあの仕掛けがある靴を履いたからああなったのよね。今だって痛いでしょう?」
それはつまり、痛くてもそれを履き続けなければならなかったと言うこと。どれだけの苦痛を感じていただろう。きっと、あれで自分を守りながら、自分を傷つけていたのだ。
「それなのに、私ってば異能を持っているってだけで怖がったりして…緋縁ちゃんは私の体質のこと、驚きはしたけど恐れたりしなかったのに…!」
ぽたり、と大粒の涙が落ちた。だが、道ゆく人はそれに気づかない。
「ごめん、なさい。」
本人が聞いてないからこそ出来た、甘露寺蜜璃の贖罪だった。
「や、やだ…!私ったら…!泣くなんて…ごめんね!」
立ち上がり懐紙で涙を拭く甘露寺。しかし、仕舞おうとした懐紙が風に乗って飛んでしまった。あっ!と声を上げ懐紙を取りに行く。
「大変、折角伊黒さんが送ってくださったものなのに…汚れては…ないみたい!よかったぁ!」
「あの、すみません。」
甘露寺に話しかけたのは黒い衣服を身に纏う男だった。
「(えっと、あれは確かすうつって言う着物よね)なんでしょうか。」
「実は、危険物が見つかりここら一帯が封鎖されるんです。…あのお連れ様は私が運びますから、あちらに移動してください。」
「え、でも…」
「急いで!大通りが火の海になるかもしれないですから!」
「は、はい…あの、必ず連れてきてくださいね。」
「承知しました。」
緋縁がいる方向とは反対方向に走り出す。大分離れたところであることに気付きはた、と止まった。
(伊黒さんから頂いた懐紙を取りに行っていたから緋縁ちゃんとはあんなに離れていたのに、どうして私が緋縁ちゃんの知り合いって分かったのかしら。)
それから宇髄と合流して、思ったことを話し、いつまで経っても戻ってこない緋縁に不審感を感じた宇髄と甘露寺が封鎖された道に入って行くまで、あと少し。