第2章 柱〈前〉
「やっぱり桜餅は美味しいわ!宇髄さんも一ついかが?」
「いや、俺はいいわ。」
桜餅、美味しいのに…
緋縁と宇髄と街に買い物に来て半時余り。空腹の甘露寺に気を利かせてまずは腹ごしらえをしていた。
「お腹いっぱい!ご馳走様でした!」
「おう。俺払っとくわ。」
「いいの?ありがとう宇髄さん!」
流石三人も奥さんがいるだけあって、気遣いもできてかっこいい…!私もあんなに優しい殿方と一生を添い遂げたいわ…!
会計が終わった宇髄と共に甘味処から出ようとすると。
「…!?宇髄さん、待って!」
「どわっ…!」
甘露寺が宇髄を引っ張り甘味処の中に戻す。外では緋縁が長椅子に座って
手を振っていた。
「誰に振っているのかしら…!もしかするとあんなちょっとの時間で気になる殿方が…!?」
「…いや、あそこのガキだろ。」
胸を高鳴らせ色恋ごとを期待する甘露寺に冷静に宇髄が突っ込む。
そもそもあんなに自分をひた隠しにして生きてきた彼女が一目見ただけで恋に落ちるなどと言う難易度の高いことは出来ないと思うのだが、甘露寺にはそんなことは見えていなかった。
「あっ!また手を振り始めたわよ!今度は何方に…って、また子どもね、緋縁ちゃんてば、優しくて可愛いわっ!」
「いや、ありゃどっちかっつーと緋縁じゃなくて…」
宇髄が言い終える前にぱたぱたと子どもが母親の元へ走って行く。子どもが手を振っていたのは緋縁に向けてではなく、母親に向けてだったのだ。やっぱりな、と宇髄が苦笑い。
「恥ずかしがってる…!可愛い〜!!」
「あー…伊黒も大変だな…」
甘露寺の暴走具合にも苦笑いである。彼女が好きなあいつの気苦労が知れる。…いや、きっとあいつのことだ。「君が言うのならそうなのだろうな」ぐらいは言いそうだ。これに彼はまたまた苦笑い。と言うか呆れ笑いである。
「…あれ?宇髄さん、緋縁ちゃん、寝てないかしら。」
「はぁ?いくらなんでもこんな人混みで寝られるヤツがいるわけ…」
そばに行けば行くほど聞こえてくる寝息。こっくり、こっくりと頭を動かしている。
「…いたな。」
「可愛い…!」
陽光にでも当てられたか、はたまた疲れがここにきて限界を迎えたか…どっちにしてもこれから着物を買ってもらわないといけないのにこんなところで寝られたら甘露寺達にも甘味処にも都合が悪いだろう。
