第2章 柱〈前〉
蜜璃ちゃんは気付いていたのだろうか。聞くと宇髄さんから口止めされてたと言う。
「こんな子供っぽいことして楽しいのかしら」
「本物の子供が何言ってんだ。」
普通の子供と同じにしないで頂きたい。こちとらちょっとだけだけだがJK謳歌してたんだぞ。そう言う意図を込めてげしげしと宇髄の足を蹴った。
「何しやがる」
「なぁんにも?」
「きゃっ!緋縁ちゃん、かっこよくて可愛いわ!」
「甘露寺お前…」
蜜璃ちゃんはどこまでも蜜璃ちゃんだった。なんだか拍子抜けだ。私は宇髄から離れて再び蜜璃ちゃんにひっついた。きゅん!はもう無視する。
「あっ!街よ!」
「あぁ、まずは着物屋か?」
「そうね。そうしようかしら。」
町に入ると美味しそうな匂いがしてくる。食事処か何かがあるのだろうか。ふんふんと嗅いでみたら今度は甘い匂い。甘味処が目の前にあったからだ。だけど肝心の着物屋が見当たらない。
「ねぇ蜜璃、着物屋って…」
尋ねようとしたのに蜜璃ちゃんからは返事さえ返ってこない。なんだどうした、と蜜璃ちゃんの方へ振り返ると、蜜璃ちゃんは一点を見つめて動いていなかった。
視線の先にあるものは、先程見つけた甘味処である。
「…蜜璃」
「…」
「蜜璃ー」
「…」
「みーつーりー」
「…」
「…寄って行きましょうか、甘味処。」
「しゃぁねぇな…」
動かない蜜璃ちゃんを引き摺って甘味処へ入ると我に返った蜜璃ちゃんがあたふたとしていてそれはもう可愛かった。ここに筋肉達磨がいなければもっと余韻に浸れたのだが…
「何してんだ、早く行くぞ。」
「わ、分かってるわよ。もう行くわよ、蜜璃。」
「で、でも、私ったらなんてはしたない真似を…!」
「昼餉前にわざわざ集まってくれたんでしょう?ならはしたなくなんてないわ。ほら早く。」
蜜璃の手をとり席に急いだ。私、さりげなくだが手を繋いでいるのか?なんだか緊張するんだけど?席に行くと宇髄はもう座っていたから、二人で向かいに腰掛けた。
「お前ら何にするんだ?」
「私は桜餅!」
「私は…みたらし団子、にする。」
「んなら俺はぜんざいにするわ。」
宇髄が店員さんを呼んで注文する。こうして率先して注文するところ優しさがあるのになんでさっきの悪戯紛いのことをしだすのか…わかりにくい奴だな。