第2章 柱〈前〉
皆が宇髄に視線を寄せる。
「こいつを連れてきたのは俺です。ド派手に安全だと信じる。こいつが何かしでかしたら俺が責任をもちましょう。」
そう啖呵を切った男にほっとした。私のことを信じてくれている人がひとりはいる。これだけで大分気持ちが楽だ。
「ありがとう。次に行冥、聞かせておくれ。」
「…安全かどうか…決めかねています…時が経たないことには…」
「反対します、お館様。宇髄ィ、しでかした後じゃおせェんだよォ。」
「すみませんが私も決めかねていまして…甘露寺さんはどうです?」
ぐ。息が詰まる。やはり現実というものは厳しい。一気に状況が覆ってしまった。思わず拳を強く握って柱たちを凝視する。
「私は信じたいわ!だって私達を騙そうとしてる子があんなに綺麗な涙を流すなんて考えられないもの!」
「…俺にはわかりません。」
「俺も判別がつかない!柱として不甲斐なし!」
「信用しない信用しない。子どもだからといって甘くは見んぞ。」
冷や汗が流れる感覚がイヤに目立つ。半分が中立だ。決めるに決められない。耀哉さんもまた考え込んでしまった。緊迫した空気が流れる。ここで駄目だと言われたら、私はどうなってしまうんだろうか。追い出される?それならまだいい。ことを知りすぎた私は下手したら幽閉…そんなのここに来る前と同じだ。震えるのは恐怖からか、拒絶からか。
「…緋縁は異例だからね。皆が悩むのも頷けるよ。だから、ちょっとした案があるんだ。」
気づけば耀哉さんの考え事は終わっていた様で、真っ直ぐに柱を見ている。
「耀哉さん、案って…」
そう言うと耀哉さんは説明しだす。柱の元に留まり私を見極めさせる、と言う内容だった。えぇと、それってつまり…
「柱の家でお泊まり…てこと?」
「早い話がそうだね。期間は…皆ゆっくり考えたいだろうし、一人一週間ほどで。それでいいかな?」
「異論ありません。」
皆異論ないんだ!怪しいっつってる対象が泊まるんだぞ!もうちょっと危機感もとうよ!いや、私が何かしようとしてもすぐねじ伏せられる程の余裕があるのか…やっぱり派手だ、この人達。色々と。
「ですが、女の子を男の家に一人、と言うのはいかがなものでしょう…隠に同行させるわけにも…」
蝶の髪飾りの人がそう言いながら私を見た。よく考えたらその通りである。どうしよう。