第2章 柱〈前〉
「お館様、俺は反対です。」
穏やかな空気を断つ様に響き渡る声。不死川さんだった。
「異能など怪しすぎます。必ず信用できるとは限りません。」
「俺も不死川に同意です。いくら人間とはいえ得体が知れなさすぎます。裏切る場合もある。鬼舞辻の手下の可能性だって十分にあるのです。そもそもその異能だって仕掛けかもしれない。」
ひくりと頬を引き攣らせる。そこまで疑うか。身元ならまだしも…異能が仕掛けかもって。逆にどうすればあんな仕掛けができるのか教えて欲しい。
「認めて欲しいなら異能が安全なものだと証明して見せろ。」
「証明?」
「簡単だ、ここで腹でも掻っ捌いて自分で治してみるといい。」
堂々と言う蛇男に今度こそ本当にドン引きした。なんて事言いやがるんだ。蜜璃さんも伊黒さん酷いわ!と声を荒げた。ほう、伊黒というのか。覚えておくからな。
「治るのだから痛みなど造作もないだろう。なんなら手伝ってやってもいいぞ。」
「いや出来ませんよそんな事」
冷静に返答する。ほんとにやってきそうで怖いな…後ずさると蜜璃さんに大丈夫よ、と笑顔で返された。ううん、癒されるな。蜜璃さんのおかげで少しだけ勇気が出てきた。
「…あなたは、刀なしで鬼を殺せますか。」
伊黒が顔を顰めて何を言っているんだと目で訴えてくる。目は口程にものを言うとはこの事だろうか。う、と一瞬後ずさるが蜜璃さんの笑顔を思い出しながら前へ進んだ。
「それと同じなんです。治療には集中力がいる。自分が怪我したら痛くてそれどころじゃないです。得体が知れないとか言ってたくせに知った様に言わないで、下さい!」
言い切った。言い切ってやったぞ。今なら自分を褒め倒せる。口答えしたことに目を見張っている伊黒はすぐに真顔に表情を戻す。言い返してくるか…!と身構えた時。
「皆、静かに。」
様哉さんの声で皆元通り頭を下げた。この人たち一斉に頭下げたりこっち向いてきたり吃驚するんだよなぁ…
耀哉さんは変わらず笑っていたが、少し考えてうん、と頷いた。
「まずは君たち柱の意見を聞こうか。天元はどうだい?」
はしら?柱は喋らないぞ。首を傾げていると蝶の髪飾りの人が私たち八人の階級のことです、と教えてくれた。