第1章 序章
「耀哉さん。受けます、それ。」
「…うん、ありがとう。」
涙が収まるまで蜜璃さんと耀哉さんは手を握っていてくれた。手が冷たい人は心があったかいって言うけれど、手が暖かい人だって心はあったかいんだ。
「おいおい、年甲斐もなくド派手に泣きまくったなぁ!」
場を和ませようとしたのか明るい声で喋る宇髄。そうですね、蝶の髪飾りの人も話し始める。
「いや、年甲斐なくないですよ」
喋り方が変わって宇髄は眉を潜めていたが耀哉さんとの話を聞いていたのか深く突っ込まなかった。
「あぁ?だってお前、背丈からして十七、八ぐらいだろ。」
「え?あぁ…」
今の私は百六五はある。大正の言い方では約五尺だろうか。しかしその認識は正しくない。
「靴にある仕掛けをしててですね…これ脱いじゃえば…よっ…」
「…は?」
ヒョイっと地面に降りる。私の正しい身長は実は百五十弱なのだ。本当の身長で皆を見るとやっぱり大きい。宇髄なんか見上げないと目も合わない。
「おま、お前、歳はいくつだ。」
「十三ですが。」
けろりと答えるとはぁ!?と大きい声で宇髄が叫ぶ。なんでこんなに驚いているんだ、と困惑したが先ほどの自分の行動を思い出す。
「十三で泣くのは可笑しいでしょうか…」
「可笑しくねぇわ馬鹿か!」
「!?馬鹿馬鹿って…宇髄が馬鹿なんじゃないんですか!」
「ばっお前俺様は神なんだから馬鹿なわけねぇだろ!」
「はーなら私の歳ぐらい見抜いて下さいよやっぱり馬鹿です馬鹿髄天元!」
「誰が馬鹿髄天元だ!」
くすくすと笑う耀哉さんの声が聞こえる。大勢の人の前で喧嘩しているのも馬鹿らしくなってきてぷいと顔を背けた。それが余計釈に触ったのか後で覚えとけよ、なんて言っている。うん、忘れよう。
「天元。」
「はい」
耀哉さんが一言名前を呼ぶだけで見張りの人たちの横に並ぶ宇髄。やっぱり耀哉さんはなんと言うか…人身掌握がうまい。
「じゃあまずは名前を考えないとね。」
「名前…ですか。」
「ないと色々と困るだろう?」
早速見張りの人たちと名前を考えてくれた。見張りの人たち、と言っても考えてくれてるのは蜜璃さんと宇髄と蝶の髪飾りの人に声が大きい人だけだけど。
「恋に私と同じ璃で恋璃ちゃんなんてどうかしら!きゃあ、お揃いっ!」
「いや、それはちょっと将来名乗りにくい気が…」