第1章 序章
「巫女に因んで神子さんなんてどうでしょう?」
「わぁそのまんま…」
「ド派手に天神で決まりだな!」
「イヤです」
「炎とかいてほむらと読むのはどうだろうか!」
「素敵な名前ですけどそれはちょっと。」
「ひより。」
耀哉さんの拾いやすい声に皆反応する。微笑んだままの耀哉さんは続いて言った。
「あかにえにしとかいて緋縁。君と会ったのも何かの縁だ。だからこんな名前にしたんだけど…どうかな。」
胸にストンと落ちた気がする。耀哉さんのフワフワする様な声のおかげか、はたまた別のせいか。まるで最初からそんな名前だったかの様に、「緋縁」は私の中に馴染んでいった。
「…緋縁がいいです。耀哉さん。」
「…それはよかった、緋縁。」
改めてよろしくね、と彼はにっこり微笑む。なんだかドキドキする。子供が玩具を貰ったときの様な高揚感だ。何故私は。
そんなこと、考えなくとも分かっていた。
(嬉しい、んだ。名前をもらえて。名前を呼ばれて。あぁ、うん。)
嬉しい。
転生なんてにわかには信じられないことになって、前世のことももう朧げだけど、私は、あのときの、あの子のいるときの様な『幸せ』を、微かに感じた。