第1章 序章
首に蛇を巻いた男が言う。なんと言うかこの人すごい…言葉に粘着力があるなぁ。
「しょうがないでしょう。ここ数年呼ばれた事なんてないんだから。」
「…あー…伊黒、落ち着け。」
宇髄が理解したとばかりに蛇の人を宥めた。案外察しのいい男だ。
「そうか、ではなんと呼べばいいのかな?」
「お好きになさって。名なんてもうどうでもいいわ。」
「少女!お館様に失礼だぞ!」
そう叫んだのは、獅子の髪っぽい人。声がでかいし髪は派手だし…いや、この人達に派手とか言っても分かんないか…これがあの人たちの普通だもんね。
「いやなんでよ。私は部外者なんでしょ。敬わなきゃいけない理由がわからないのだけれど。」
私が反論するとむう、と押し黙る。ははん、見たか。ここでこの家の屋敷の主はあの人だと言われない限り私は無敵ぞ。
「ふふ…してやられたね、杏寿朗。では、そろそろ本題に入ろうか。これは治せそうかな?」
「…失礼するわ」
立ち上がって耀哉さんの前に立ち額を見る。目まで侵食はしてなさそうだが…やはりこんな病は見た事がない。呪い…は見た事ないし。
「この呪いは何故出来たのかしら、それが分からない事には治療はできないわ。」
「成程…では、話そう。」
そして聞いた内容によると、過去に一族から『鬼』を生み出したためにかけられた短命の呪い…らしい。それから一族はその鬼を滅する事を悲願してきたとか。
「要はとんだとばっちりってことね。」
「面白い考え方だね。でもこれは、私の使命とも言うかな。」
耀哉さんは微笑んで答えた。なんだろう、不思議な声だ。安らぐ、と言うか、なんと言うか。初めて会った時から思ってはいたが。
「使命なら、直さないほうがいいのではなくって?」
「お前…!」
「実弥。いいんだ。…でも、あまりに早く死んだらまだ幼い息子に迷惑をかけてしまうからね。」
「あぁ、そうね、親心ってやつね。まぁいいわ、やってみるけど、呪いなんて相手にしたことないから期待しないで頂戴な。」
耀哉さんの横に座って目を閉じる。暫くして、見張りの人達から声が聞こえた。なんでも私が異能を使ってる時は地面に魔法陣もどきが浮かび上がるそうな。いつも目閉じてるから見たことないけど。
「これは…」
耀哉さんも声を出した。初見の人は大体驚くので逃げたりするのだが、動かない耀哉さんはすごいと思う。