第9章 逢引ブロック!②
エースは、一足先にブラウニー通りの時計台へとやって来ていた。待ち合わせをするカップルがウジャウジャといて、気分が悪いと言ったらない。
まぁこの街で男女が待ち合わせをするならば ここか、もしくは赤煉瓦通りに面したキャンディーの泉広場くらいのもの。
恋人同士が使う定番の待ち合わせスポットなのだから、浮かれた連中が多いのも必然なのだ。
そんな人々を、イライラしつつも柱の影から見守ること、約十五分。最後に現れると踏んでいた男がやって来た。
「やっほー カニちゃん。待ったぁ?待ってないよな。まぁべつにどっちでもいいけど」
「現れる時にどんな台詞チョイスしてんだこの人。まぁそんなに待ってませんけど」
「サバちゃんは?まだ来てねぇの?」
「そうなんですよね。実はまだ来てな」
その時。時計台の下にエリーが現れた。エースが彼女の私服姿を見るのは、これが初めてである。
短いスカートとハイソックスの間から覗く肌色。その絶対領域に、目が釘付けになってしまう。
「お〜い。カニちゃーん」
「はっ!す、すんません!べつに、見惚れてたとかじゃないんで、殺さないでください!」
「面白いこと言うね。そんなんさぁ…許されるわけないじゃん。バレバレの嘘吐いてんじゃねぇよ」
「ぎゃーー!!」
「ちょっと、冗談だから静かにしてくんない?お前が騒いだせいで人魚ちゃんに気付かれたら、本気で絞めちゃうよ?」
エースは自分の口を自分で塞いで、こくこくと涙目で頷いた。