第9章 逢引ブロック!②
十二時までには、あと三十分もある。それなのに、エリーは待ち合わせ場所に現れた。それほど、このデートが楽しみだったのか。そんなにも、早くあの男に会いたいのか。
緊張した面持ちで、待ち合わせ場所に立つ彼女を見て、エースは胸が痛んだ。そして、自分がこのデートをぶち壊そうと画策していることに罪悪感を覚える。
「ねぇサバちゃんはー?もう人魚ちゃん来ちゃってんのにさぁ。遅刻とかありえねんだけど」
「いや、まだ遅刻ってわけじゃ…。あ でもそろそろ、オレらが決めた待ち合わせ時間になりますね」
彼らが決めた定刻は、十一時三十分。
エースは、スマホ画面を確認する。すると図ったようなタイミングで、デュースからの着信が入る。
「もしもし、デュース?お前、いま何やってんの?もうエリー来ちゃっ」
《 はぁっ…は、…っ!今は、ひ、ひったくり犯を追ってる!! 》
「なんで!?!?」
《 エースと別々に寮を出たのが、そもそもの、間違いだったのかもしれない…っ!はぁっ 》
「息上がってんなぁ…」しんどそう
《 街に着いた途端、高い木の上に、降りられなくなってる子猫を見つけて…!なんとか降ろしてやったんだが、木の上から、今度は迷子になってる子供を見つけてしまったんだ…。っ、で、一緒に親を探してやって、見つかったは良いが、今度は重い荷物を持ったお婆さんがいて 》
「分かった。もう十分だデュース。とにかく、そういう日なんだな。エリーのことは、オレとフロイド先輩に任せろ」
《 エース…! 》
「なんでもない日。ならぬ、なにかがあり過ぎる日を迎えているお前に、オレが言えるのはこれくらいだ。
絶対に、ひったくり犯 捕まえろよな」
《 っ…!ありがとう!!俺は絶対に諦めな 》
エースは、ブツっと通話を終わらせた。