第11章 父と娘の一日
(どうしよう…どうしよう…私、なんてことをしちゃったんだろう…まさか寝ちゃうなんてっ!)
昼餉の後、ウトウトし始めた結華を布団に寝かせ、子守唄などを歌っているうちに、いつの間にか自分も眠ってしまっていたらしい。
ふと気が付いたら布団に突っ伏していて…傍らに寝ているはずの結華の姿がどこにもなかった。
「っ…結華っ、どこ?」
寝所の襖が開いていて、部屋中探しても、どこにもいないのだ。
(どうしよう…私が襖を閉め忘れてたから…もう寝返りも這いずりもできるのだから、気を付けていないとダメだったのに。どこに行っちゃったの??)
「結華っ!」
「っ…うぉっ!?」
居ても立っても居られず、慌てて部屋を飛び出した私は、ちょうど部屋の前の廊下を通りかかった秀吉さんと鉢合わせた。
「朱里っ!?どうしたんだ、そんなに慌てて」
「秀吉さんっ…結華が…結華がいないのっ。どうしよう…私が目を離したばっかりに…」
「結華がいない?いないって、どういうことだ?その、俺は御館様を呼びに来たんだが……」
「へ?信長様?何でそこで信長様が出てくるの??」
「ん? ちょっと前に御館様がこちらにお越しになっただろ?」
「…………え?」
「……………?」
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「信長様っ、失礼しますっ!」
秀吉さんから事情を聞いた私は、すぐさま天主へと駆け上がり、勢いよく入り口の襖を開けた。
「ひぃっ…何、これ……」
部屋へ入った途端、床に散乱する割れたびいどろの破片と色とりどりの金平糖の惨状に息を呑む。
その他にもあちこち物が倒れたり、書類が散乱したりしていて、几帳面な信長様らしからぬ有り様だった。
(まるで賊に入られたみたいな…何なの、これは…)
「っ…信長様…?」
ご政務の休憩中に私の部屋へ向かわれたと、秀吉さんは言っていた。ならば、信長様が結華を連れていかれたに違いないと思い、急いで天主まで来てみたのだが…まさか天主がこんな状態になっているとは思ってもみなかった。
(ここにはいらっしゃらないのかしら…結華はどこっ?)
まさか一人でどこかに……
段差から落ちたり…食べてはいけないものを口にしたり…?
(あぁ…疲れていたとはいえ、うたた寝なんて…少しの間でも目を離すなんて母親失格だ、私…)
自分の不注意に落ち込んでいると……