第10章 武将達の秘め事②
「なるほど…女の好み、か……それはなかなか興味深い話だな。
……で?家康、お前はどんな女が好みなんだ?」
ニヤリと意地悪く笑いながら聞いてくる光秀を見た家康は、自分がとんでもない話題を振ってしまったことに気付く。
(これは…面倒なことになってきたな)
「俺の好みなんて、普通ですよ。聞いても特に面白いことないんで放っておいて下さい」
さらりと流そうと思った家康だったが、当然のことながら、この場には、そんなに簡単に許してくれる相手は一人もいない。
「普通って何だ、普通って。具体的に言え」
空になった盃になみなみと酒を注ぎ入れながら、政宗が家康の顔を覗き込んでくる。
(今日の政宗さん、妙に絡んでくるな…はぁ…これは、言わないと終わらないやつか…)
「俺は…ほんとに普通でいいんです。しいて言うなら、美人っていうよりかは可愛い感じの子、がいいです。年上の気の強い女性は苦手なんで」
「へぇ…」
「家康様は、可愛い女性がお好きなのですね!」
「煩い、三成。黙ってろ」
(はぁ…最悪。何だって三成にまで自分の好みを知られなきゃならないんだろう。もう、こうなったら……)
「そういう政宗さんはどうなんですか?」
「俺か?俺は…そうだな、常識に囚われないような面白い女がいいな。一緒にいて楽しいのがいい。美人だと、なお良いな」
「政宗さんらしいですね。じゃあ、秀吉さんは?」
ニコニコと人好きのする笑顔で話を聞いていた秀吉は、まさか自分にも振られるとは思っていなかったらしく、飲んだばかりの酒を吹きそうになった。
「ぶはっ!げほっ…いきなり俺に聞くなよ。っ…女の好みって言われてもなぁ…女はみんな健気で可愛い子ばっかりだからな、構ってやりたくなる」
「つい世話を焼きたくなるような子ってことですか?恋仲が出来たら秀吉さんは、とことん甘やかしそうですよね。
えーっとじゃあ、次、三成は?」
三成の好みなど、さして興味はなかったが、話の流れで順番に聞かざるを得ない。
「あ、私ですか?私は、一緒にいても気を遣わない女性がいいですね。私が書物に没頭していても気にしない方がいいです。女性との時間より、新しい書物を読む時間を優先したいですから。
あっ、でも綺麗な女性は好きです」
「…………………」
(三成の世話を焼く女は大変だな……あっ、それは秀吉さんの役目か…)