第35章 昼想夜夢
己の欲深さに戸惑いながらも、信長を求めて次第に熱くなる身体は最早、自分ではどうすることもできなかった。
もっと満たして欲しい、もっと触れて……口にはできない想いが溢れ、自ら強請るように信長の首に腕を回して縋りついた。
信長は答えるように一度強く抱き締めると、朱里の身体を軽々と抱き上げて寝所へと足を向ける。
寝台の上にそっと降ろし、自らの着物の帯を緩めながら、至極愉しそうな笑みを口元に浮かべつつ横たわる朱里を見下ろして言う。
「貴様にこの五日間の埋め合わせを命じる。今宵から五日の間、この部屋から出ることを許さん。俺を…一人にした罰だ」
「えっ…今、なんと…?んっ、ああっ…」
くくっ…と喉奥を鳴らして悪戯っぽく笑いながら、信長は朱里の華奢な身体を組み敷く。
ポツリと呟くように言われた最後の言葉は夜闇に溶けて聞き取れず、反射的に問い返しはしたものの、首筋へと深く顔を埋めた信長に柔いところの肌を吸い上げられてしまうと、それ以上深く問いただすことはできず、信長の表情を窺うことも叶わなかった。
与えられる熱に浮かされて、快楽の波に飲まれていく。
(離れていても信長様を思う気持ちは変わらなかったけど、やっぱりこうしてお傍にいられることが何よりも嬉しい。埋め合わせになるのかは分からないけど、信長様が望まれるならどんなことでもしてあげたい。貴方を思うこの気持ちを余すことなく伝えたいから…)
「信長様、愛しています」
「っ……」
次々と与えられる愛撫に翻弄されながらも耳元で愛を囁くと、胸元に触れていた信長の手が一瞬止まる。
「城を出て子供達と過ごした時間は思っていた以上に楽しくて、忘れられない良い思い出になりました。でも、信長様と触れ合えない時間はやっぱり寂しくて…ずっとどこか満たされてなくて…だから、その…今宵からずっとお傍にいられることが…嬉しい…です」
思いの丈を伝えてから、耳朶にそっと唇を寄せて小さく口付けた。
唇が触れた瞬間は耳朶のひんやりとした感触が心地良かったが、そのまま唇で柔く食んでいると、信長の耳が赤みを帯びて、かぁっ…と熱を上げて熱くなっていくのが分かった。
(んん?あれ?)
「くっ…朱里っ…」
「信長さま…?」