第35章 昼想夜夢
口唇を割って差し込まれた舌が口内を這う感触に、ぞくりと甘い痺れが背を駆け上がる。
帯を解かれて緩んだ着物がはらりと床に落とされると、襦袢一枚になった身体からは自然と匂い立つような女の色気が溢れ出る。
「んっ…やっ…」
襦袢越しに身体を撫でる信長の手の感触が気持ちよくて、思考が次第に蕩けていく。
深くまで貪るような口付けに吐息まで奪われて、お腹の奥が甘く疼き始める。
身体の線を確かめるように撫でていた信長の手は背中から腰の括れを伝い、丸く形の良い尻をやわやわと揉み上げる。
しっとりと汗ばみ始めた身体に夏用の生地の薄い襦袢が貼り付いて女らしい柔らかな曲線がより一層強調されている。
硬くしこり始めた胸の尖りが襦袢の生地に透けて、隙間なく抱き合う信長の身体に押し付けられているのが恥ずかしい。
「っ…信長さまも…」
「ん?」
「脱いで…下さい。私だけこんな…んっ…乱れて…恥ずかし…っ」
着崩れた襦袢姿の自分に対して信長の方は一分の乱れもなく、その佇まいにはいつもの如くの余裕すら感じる。
愛用の薫物の香りが信長が身動ぐたびにふわりと香り、上品なその香りに包まれていると、己の乱れた姿が恥ずかしくなってしまう。
「ふっ…乱れているのは貴様だけだと思っているのか?」
「えっ…あっ…んんっ…!?」
腰に回った腕に強い力で引き寄せられて、ぐっっと身体が密着する。足の間に割って入るように押し付けられた信長の身体が、朱里のお腹の辺りを圧迫して…
(んっ…これ…信長様の…)
着物越しでは見た目に気付かなかったが、朱里のお腹の辺りを圧迫する硬いものの存在に思いあたって、途端に心の臓が煩く騒ぎ始める。
「信長さまっ…」
「艶めいた貴様を前にして俺が冷静でいられるわけがなかろう?分かるか?俺は…こんなにも貴様が欲しい」
耳元で吐息混じりに告げられた声と、強く押し当てられた下腹部の熱にくらりと眩暈を覚える。
足の間がじゅわんっと潤みを帯びる感触に、密かに足を擦り合わせた。
(私も…信長様が欲しい。離れている間は逢えなくて寂しいという気持ちだけだったのに…逢ったら次はもっと欲しくなってしまった。もっともっと…貴方に触れて、貴方を強く感じたいと思ってしまった。私の貴方への想いは海よりも深く、そして止まることを知らない。あぁ…本当になんて欲深いことだろうか)