第35章 昼想夜夢
困ったように溜め息を吐きながら、信長はふわりと腕を回して朱里を抱き締める。
「の、信長さまっ…?」
「……………逢いたかった」
(えっ……!?)
腕の中に囚われたまま、悩ましげに耳元で囁かれた言葉に驚いてしまう。
「あ、あの……」
「僅か五日ばかり離れておっただけだというのに…俺は貴様に逢いたくて…貴様が欲しくて堪らなかった」
「っ…んっ……」
胸の内を曝け出すような言葉を耳奥に注ぎ込まれ、耳朶を唇で柔く挟んで甘噛みされる。
「んんっ…や、あぁっ…」
耳裏を伝い、首筋へ滑るように移動した唇に、ちゅうっ…と強く吸いつかれて、思わず甲高い声を上げてしまった。
口付けられたところがかあっと熱くなり、身の奥の熱がじわりと上がったような気がした。
首筋に唇を寄せたまま、背中に回っていた信長の手は朱里の着物の帯を解き始める。
帯の締め付けが緩んだ気配に、ふわふわとしていた意識が現実へと引き戻される。
「やっ…ま、待って…先に湯浴みを…」
戻って早々に駆けつけたため、着替えもまだだった。
夏の暑い日のことでもあり、汗ばんで埃っぽくなった身体が急に気になってしまい、恥ずかしくて離れようとするけれど…
「待てん。今すぐ寄越せ」
情欲に火がついた信長は性急に朱里を求めていて、抱き締める腕にも力が籠る。離れていた間に燻り続けていた恋情が、朱里の顔を見た途端に一気に燃え上がったかのようだった。
(信長様からこんな風に求められるなんて想像もしてなかった。離れている五日の間、信長様も寂しいと思って下さっていたの…?『逢いたかった』って言って下さった。逢えない時間をもどかしく思っていたのは私だけではなかったことが、こんなにも嬉しいなんて…)
愛しい人から求められている実感に、嬉しくて心の奥が震える。
思いに答えるように自らも信長の背に腕を回し、ぎゅっと抱き締めた。
「信長様…私も…貴方に逢いたかった」
「っ……」
「逢えない時間が寂しくて、もどかしくて…昼も夜も貴方のことばかり考えてしまって…っあっ…んっ!」
遮るように唇を奪われて、深くまで貪るように口付けられる。