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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第34章 依依恋々


天下人たる信長が人目を憚るのもどうかと思うが、京の町衆に気付かれて騒ぎになっても面倒だ。
何だかんだで護衛は自分一人という忍びの旅になってしまったが、一人でも主をお守りできるという自負はあった。

(まぁ、朱里と結華が楽しそうで何よりだな)

京の賑わいを楽しんでいる様子の二人を秀吉は微笑ましげに見遣る。
朱里が慶次と京へ行きたいと言い出して信長の機嫌を損ね、二人が何とも気まずい雰囲気になってどうなることかと思ったが、最終的には信長が折れて朱里の希望が叶った形になった。

(御館様は絶対にお許しにならないと思っていたが…やはり朱里には甘くていらっしゃる。こうして物陰から見守られるほど心配なのにその願いは叶えてやりたいと思われたのだろう。内心は複雑なのだろうが…)

信長の朱里への想いは何年経っても変わらず愛情深いようだ。
その激しい独占欲は隠しようもなく、『信長は寵愛深い正室を城の奥深くに閉じ込めて滅多に表に出さぬ』などという極端な噂が実しやかに囁かれるほどである。
事実、日頃から信長は朱里を大坂城下であっても一人で外出させることはない。それは重く深い愛ゆえの束縛という面もあるのかもしれないが、一番の理由は朱里の身の安全を考えてのことだ。
『天下人の寵妃』『信長の珠玉の宝』とも言われている朱里は圧倒的な強さを持つ信長の唯一の弱みにもなりかねない存在だ。愛しい者は自分の目の届くところに置き、その身に降りかかるあらゆる危険を排除し、自分の手で守りたいと思う気持ちは、信長でなくとも男なら誰しもが持つ気持ちだろう。
朱里もまた信長の思いを理解して不満を漏らすこともなく、日々を穏やかに過ごしている。
此度のように、朱里が信長に強く願い事をするなど滅多にないことだったのだ。

(普段は我が儘なんて言わない朱里の願いだ。御館様でなくとも叶えてやりたいと思うのは当然だ。俺だって…朱里が喜ぶことなら何だってしてやりたい。京での滞在は僅かな間だが、安心して楽しい時間を過ごせるようにしてやらないとな)

陰から見守ることしかできないのがもどかしくもあるが…と秀吉が思っている傍で、信長もまた同じように内心に歯痒さを秘めながらも二人を静かに見守っていたのだった。


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