第33章 ハッピーイースター〜春待ちて
(こんなに探しても見つからないなんて…政宗は一体どこに隠したの??)
もう間もなく終了という時間が近づいていたが、信長様の卵は未だ見つかっていない。
大広間では子供達が見つけた卵の数に応じて、各々ご褒美の菓子や玩具を貰っていたが、一番の目玉である信長様の卵を見つけたという者はいなかった。
武将達も各々戻って来ていたが、誰も見つけた様子はない。
(一番の目玉の卵が見つかってないんじゃ、このまま終われない。何か手掛かりでも出してもらわないと…)
一番手柄と銘打ったからには、見つけないで終わるわけにはいかないだろう。
卵を隠した政宗から手掛かりを聞くために厨へと向かうことにする。政宗は厨でこの後の食事会の準備をしているはずだった。
「お、宝探しはもう終わったのか?」
「うん、今は子供達が順番にご褒美を貰ってるところ。お料理の準備ありがとう、政宗。わっ、それ、筍(たけのこ)?春の献立だね」
「おぅ、宝探しで春を感じた後は、舌でも春の味を感じてもらおうと思ってな」
「それ、いいね。筍ご飯とか、子供達も好きだし」
竈(かまど)の上の鍋からは、筍の煮物が煮えているのか、出汁の良い香りがしていた。
良い香りに途端に空腹を覚えるが、ここは我慢だ。
「で、朱里は手伝いに来てくれたのか?」
「や、えっと、私は政宗に聞きたいことがあって…その、信長様の卵のことなんだけど」
「見つけたのか?」
「それがまだ…っていうか、このままだと誰も見つけられずに終わっちゃうんだけど」
「ふ〜ん、あいつらも見つけられてないのか?」
政宗は料理の手を止めずにニヤニヤと意地悪そうに笑う。
「もぅ、政宗ったら一体どこに隠したの?」
「それは言えねぇな」
「ええっ…でもこのままじゃ終われないよ。信長様だってわざわざご褒美を用意して下さってるんだし、見つけないわけにはいかないんじゃない?ほんのちょっと…何か手掛かりとか、ないのかな?」
「ははっ…ちょっと難しくし過ぎたか。確かにこのまま見つけられずに終わるのは信長様にも悪いか…手掛かり、そうだな…隠してある場所は広間じゃなくて庭の方だ。庭のこの時期にしか見られないものの近くにある」
「!?ありがとう、政宗。皆にも言って探してみるね!」
(庭にあるこの時期にしか見られないもの?春らしいものは沢山あったけど、どれのことだろう?)