第33章 ハッピーイースター〜春待ちて
「はぁ…いい大人が宝探しなんて、くだらない」
広間の喧騒に煩わしそうに顔を顰めながら溜め息を吐いているのは家康だった。
「こら、家康。御館様のなさることをくだらないとは何だ」
「大体、これって異国の宗教の祭りなんですよね?信長様がいくら新しいものが好きだからって、特別な思い入れもない人の復活を祝う義理は俺にはありませんから」
「おや、家康様、そのお手元のものは…早速に一つ見つけられるとは、さすがは家康様ですね!私も見習わなくては」
「っ…余計なことを…三成は黙ってて」
家康は三成の視線を避けるようにして、手に持っていた黄色の卵を決まり悪そうに懐に入れる。
「貴様ら、無駄口ばかり叩いてないでさっさと行け。子供らに遅れを取るなよ」
上座でゆったりと構えていた信長だが、わいわいと言い合ってばかりで一向に卵探しを始めない武将達に呆れたように言う。
「あの、信長様は参加されないんですか?」
「俺は見届け役だ」
「では、そのぅ、信長様は卵の隠し場所はご存知ないのですか?」
「例の卵のことか?俺は知らん。知っているのは政宗だけだ」
(信長様も知らないなんて…これは相当難しそう)
チラリと政宗に視線を向けてみたが、不敵な笑みを返されただけだった。
子供達は一つでも多く見つけたいという気持ちの方が強いのだろうが、大人の方はやはり例の一番手柄の卵を見つけて信長から直々に褒美を貰いたいと思うのは当然であり…
「はは、はやく!はやくおにわ、いこ!」
「あ、はいはい…よーし、吉法師、いっぱい見つけるよー!」
障子を開け放った大広間は春の日差しが射し込んでぽかぽかと暖かい。庭もきっと春らしい暖かさだろう。
日頃は部屋の中で過ごすことの多い身には、新しい季節の到来を感じさせてくれる陽気だ。
さあ、春の息吹を感じながら、子供達と目一杯宝探しを楽しもう。