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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第32章 専属女中は愛されて


髪を整え、着替えを終えた信長様はうっとりするほどの男振りだった。

「朱里」

衣装に乱れはないか最終確認をしていると、信長様に改まったように名を呼ばれる。

「今宵は貴様も宴に出よ」

「えっ……」

思いも寄らないことを言われて、驚きで言葉が出てこない。

(宴に出る?私が??)

「いえいえいえ!無理です、私が宴に出るなんて!」

「無理ではない。俺の傍におれ。片時も離れることは許さん」

「えぇっ…傍にって…あ、宴の給仕役としてですか?それなら…専属の給仕役としてなら…」

今宵の宴は招待してくれた大名家側が取り仕切るので、信長様の専属女中である私には特段役目がなかったのだが、信長様専属の給仕役としてなら宴に出てもおかしくはないだろうと思ったのだ。

「それはならん。女中の役目はもう終いだ。今宵の宴は俺の隣で俺の『恋仲』として過ごせ」

「なっ…急に何を…そんなこと、できるはずがありません!」
(女中が実は恋仲でした、なんて今更言えない。それに、宴に出るような用意もないし…)

恋仲の姫として信長様の隣に並ぶなら相応の支度がいるだろうが、生憎と着物は女中のお仕着せしか持ってきていない。
さすがにこの格好のままで宴に出るのは失礼だろう。
共に宴に出るように言ってもらえたことは嬉しかったが、現実的に考えれば今の私が宴に出るのは場違いな気がするのだ。

内心で残念に思う気持ちが表に出てしまわないように、そっと目を伏せる朱里に信長は思いがけない言葉をかける。

「朱里、この滞在中の女中としての貴様の働きぶりは見事であった。故に褒美を取らす」

「えっ、ご褒美ですか?ご褒美はもう十分頂いてます。これ以上の特別扱いは無用です」

この滞在中、信長様は『ご褒美』という名目で私を沢山甘やかして下さった。これ以上はさすがに身に余るというものだ。

「つれないことを言うな。貴様を甘やかすのは俺だけの特権だ。良き働きに報いるのは城主の務めだと言うたであろう?朱里、貴様への褒美はこれだ。遠慮なく受け取れ」

そう言うと、信長様は傍らから風呂敷包みを取り出し、私の目の前で開いて見せた。




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