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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第28章 ちぇんじ〜俺が貴様で貴様が俺で


「ありがとうございます、朱里様。そうですね…不安になってばかりではいけませんよね。私も相手の方を知る努力をすることに致します。朱里様と信長様のように仲睦まじい…夫婦になれるように」

少し気持ちの整理がついたのか、スッキリとした表情を見せる娘の様子に信長の心もまた晴れやかな心地を覚える。

『お互いがお互いのことを一つずつ知り、違いを理解して歩み寄っていく』

簡単なことのように思えて意外と難しいことだ。
生まれも育ってきた環境も違う者同士、互いに理解し合えず、時には衝突することもあるだろう。戦乱の世では明日の命さえ確かなものではなく、想いを通じ合えたとしても生涯添い遂げられる保証はない。
それでも己が繋いだこの縁がこの娘にとって幸多きものとなることを信長は願わずにはいられなかった。



(すっかり遅くなってしまったな…)

女子達の茶会はその後も話題が尽きることなく盛り上がり、信長が解放された頃には予想以上に時間が経っていた。
とはいえ、思いがけず朱里と入れ替わったことで日頃はあまり話を聞く機会もない女子達の本音を知ることができた有意義な時間ではあった。

信長は人目を避けて真っ直ぐに天主へと向かう。
着慣れぬ打掛の裾を捌きながら階段を昇るのは思った以上に骨が折れた。ようやく部屋の前に着き、いつものようにスパーンっと勢い良く襖を開くと、部屋の中で『信長』らしくなくちょこんと座っていた朱里は驚いたようにビクリと身を震わせた。

「の、信長様…あ、あの…お帰りなさい」

挨拶とともに『信長』の姿をした朱里が慌てて頭を下げる。

「くくっ…まさか己自身に『お帰り』を言われるとはな。今、貴様はこの天主の主なのだぞ?」

「えっ…だ、だって私は信長様であって信長様ではないっていうか…えっと、その、信長様が私で、私が信長様で…ん?あぁ、もう何が何だか…」

「おい、何を訳の分からんことを言っている?少し落ち着け」

「そ、そんな…こんな状況、落ち着いていられないですよ!」

冷静に顔色一つ変えない信長様を見ているうちに、私の方は反対に益々慌ててしまうのだった。

「全く…そんな調子で軍議は上手くやれたのか?よもや、おかしなことは言っていないだろうな?」

「そ、そんなことは…」

不信感たっぷりの声音で言いながら顔を覗き込まれて、後ろめたさから思わず目を逸らしてしまった。
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