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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第28章 ちぇんじ〜俺が貴様で貴様が俺で


朱里と別れた信長は真っ直ぐに城の道場へと向かっていた。
聞けば朱里はこれから家臣の娘達と共に薙刀の稽古をする予定であり、約束の刻限に遅れそうだったため急いでいたらしい。

(薙刀か…正式に習ったことはないが、まぁ、槍の扱いとそう変わらぬだろう)

朱里は儚げで大人しそうな姫らしい外見に反して武術の嗜みがあり、信長の許しを得て家臣の娘達を集め、安土城内で薙刀教室を開いているのだった。
生まれ育った小田原の地から遠く離れた安土へ来て、慣れぬ土地で戸惑うことも多い中、年頃の近い親しい者が一人でも多くできればよいと思い、信長は朱里の望むようにさせていた。
純粋で表裏のない性格の朱里は家臣の娘達ともすぐ打ち解けて、薙刀教室は盛況であると秀吉からも報告を受けていたが、女達の集まりということもあり、信長は実際にその場を訪れたことはなかったのだが……

思わぬことで中身が入れ替わり、信長は今、『朱里』として女子達の前に立っていた。

「朱里様、本日も宜しくお願い致します」
「お願い致します!」

着物を襷掛けし、凛々しく髪を結い上げた女子衆が居並び、勇ましく薙刀を持つ様は何とも頼もしい限りだった。
この乱世では戦場にまで赴く女子は少ないとはいえ、いざ城が敵に囲まれ籠城ともなれば女子とて武器を取って戦わねばならない。
更には城主が討ち死にでもしようものなら、奥を預かる正室は女城主となって家臣達を束ね、戦の采配を振るわねばならぬこともあった。
戦いの世を生き抜くためには、男であろうと女であろうと関係なく自分が出来る精一杯のことをやらねばならないのだ。

信長は己自身で朱里を守り、その身を爪の先ほども危険に晒すつもりはなかったが、それと同時に朱里がただ守られることに甘んじているような性格の女ではないこともまた好ましく思っていた。

(愛らしく可憐な姫らしい姿も良いが、キリリと髪を結い上げた凛々しい姿もまた良いな)

揺れる髪先にそっと触れる。
急いで来たために入れ替わった後の己の姿を姿見で確かめる間もなく、いまだ心の片隅ではどこか信じられぬ思いでいた信長であったが、この状況はやはり現実らしいと長く艶やかな黒髪に触れながら実感する。


「……朱里様、どうかなさいましたか?」

先程最初に挨拶をした代表格らしき娘が心配そうに声を掛けてくる。

「何でもない。では…始めようか」


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