第28章 ちぇんじ〜俺が貴様で貴様が俺で
「ど、どういうこと!?これは一体…何がどうなって…」
頭がズキズキ痛むのは、ぶつけたせいばかりではないだろう。目の前の光景が容易に受け入れ難く、『何故?どうして?』と、思考がぐるぐると堂々巡りするばかりだった。
(私が信長様で…信長様が私!?えーっ、こんなこと…ある?)
「の、信長様…ですよね?」
『私』の姿をした『中身は信長様』に恐る恐る呼びかける。
(わっ…これ、信長様の声だ。私達、本当に中身だけ入れ替わっちゃったんだ…)
自分の発した声が自分のものではなく、信長の重厚感のある低い声であることに今更ながら驚く。
「朱里、これは一体どういうことだ?貴様、何をした?」
(っ…私が私の声なのに口調が信長様って…もぅ、訳分かんないよ。何がどうなってこうなったの!?)
「な、何もしてませんよ!私だって訳が分からないんですから…こ、こんな有り得ないこと…」
世にも不思議な現象が急に怖くなり、ふるりと身体が震えるのを思わず両腕でぎゅっと抱き締める。
「……おい、俺の身体で妙な真似をするな」
憮然とした表情の『私』が苦々しげに言う。
(ああっ、もぅ!ややこしいな、これ)
「妙な真似って言われても…仕方ないじゃないですか…ちょっ…信長様こそ、そんなに足を開かないで下さい!着物の裾、もっと押さえてくれないと見えちゃうじゃないですか!」
「はぁ?これが普通であろう?」
心外なと言わんばかりの表情になった私の姿の信長様は、裾を押さえるどころか、大胆にも女の着物で胡座を掻こうとする。
勢いよく足を開いた拍子に裾が絡げて、大胆にも内腿の辺りが肌けて見えた。
「うわぁ!ちょっと止めて下さい!は、はしたない…」
チラリと見えた白い肌に、自分の身体だというのに目のやり場に困ってドギマギしてしまう。
「貴様、何を言っておる?少しばかり足が見えたぐらい、大したことではない」
「そ、そんな…信長様っ、それは一応、私の身体なんですから…信長様以外の方に見られたら困ります!」
「むっ……」
私の必死の訴えを理解してくれたのか、状況が飲み込めたからなのか、『中身は信長様の私』はその場で居住まいを正して『中身は私の信長様』に向き合った。